光と色の話 第一部

光と色の話 第一部

第11回『色』って何だろう?・・・(その 1 )

・・・・・ 「光」と「感覚」が「色」の存在条件 ・・・・・

はじめに

「光と色の話」と題してこの連載を続けてきましたが、第 1 回から第 10 回までは、ずっと光についての話ばかりでした。この辺りで、光そのものの話は一休みして、今回から色の話に入っていきましょう。(とは言っても、光の話が関係無いという訳ではなく、おおいに関係しています。)
私たちは、この世に生を受けて以来、ず~っと色に囲まれて成長し、生活してきました。まさに「色の海」の中を泳いできたようなもので、殆ど全ての人は無意識的に「色」を認識し、「色」が見えて当たり前、当たり前過ぎて何の不思議も無く生活してきたというのが実情ではないでしょうか。

私たちは、日常生活や業務のあらゆる局面において、色から様々な情報を得て、それによって思考・行動している、と言っても過言ではありません。物質的にも精神的にも色は我々の人間生活の隅々にまで大きな影響を及ぼしています。しかしそれにも関わらず、初等中等教育の段階で色のことを教わるのは、図画工作や美術の授業での主に芸術的な側面からの教育が主で、理科の授業で科学的な側面から色を教わることは、ニュートンによるプリズムの分光実験や虹の発生原理などごく僅かです。また、大学教育でも、特殊な学科を除けば一般教養として色のことを科学的な側面から学ぶ機会は少ないように思います。 ここでは、「色」とは何か?ということを、科学的な側面からできるだけ分かり易く説明することから始めていきたいと思います。

まず最初に、物体の色は物体そのモノに固有の色がついていると思い込んでいる人が多いのではないでしょうか?熟れたイチゴは真っ赤ですし、若葉の色は明るい緑であると信じて疑いません。でも本当にそうなのでしょうか?
「色」とは、後ほど詳しく説明しますが、「光」と「視覚(感覚)」が存在して初めて成り立つものなのですが、「光」と「色」は全く別物である、と思っている人も多いのが実態です。「色」にとって、「光」は切っても切り離せないもので、決して別物ではないのです。この連載で、この辺りの事情をできるだけ実例を挙げながら分かり易く説明していきたいと考えています。

マシンビジョンと「色」

「色」が成り立つためには、「光」と「視覚(動物の眼と脳)」の機能が必要です。この内、眼の機能は、光を複数の波長域に分割して検知するものであり、脳の機能はそれら複数の波長域に対する刺激の相対関係を判断して色を認識するものです。これらの眼と脳が人間特有の特性を備えると「人間の色覚」※1が形成されることになります。
そういう意味で、マシンビジョンにおいては、特殊な場合を除いて、狭い意味の「色」の概念は適用できないといっても良いかもしれません。しかしマシンビジョンにおいても、「色」を判別する場合は多くあり、また更に、光を複数の波長帯に分割し、その波長帯毎の光の強度比を調べるというようなことはよくあることで、このような場合は広い意味の「色」と解釈することも可能なように思います。いずれにしても、「色」の本質を理解することは、マシンビジョンにも通底する場合も多く、マシンビジョンに従事する方々にも参考になるかと思います。

「光」は「色」の源 ・・・・・ 「光」が無ければ「色」は存在しない

我々にモノ(例えばイチゴ)の色が見えるのは、それを照らしている光(可視光)があって、その光がモノ(イチゴ)によって反射され、その光が眼に入ってきているからなのです。
従って、照明光を消して真っ暗にすれば、姿形は勿論、「色」も見えなくなってしまいますね。つまり、照明光は「色」の源、「色」が存在するための前提条件ということができます。

「色」を感じるためには 「眼と脳」の働きが必須

「光」は「色」の源なのですが、「光」がありさえすれば「色」が存在するのでしょうか?否、「光」だけでは「色」は存在しえないのです※2
光源からの光が物体に当って反射され、その反射光が眼に入ってくるのですが、この段階まではただ単なる物理的なエネルギーでしかありません。その光のエネルギーを感じ取るのが眼の網膜上に分布している視細胞と呼ばれる光を感じることができる細胞なのです。眼に入射した光によって刺激を受けた視細胞から、その刺激の大きさに応じた信号が脳に送られ、脳がその信号によって(形や)色を認識するのです。

もう少し詳しく説明します。
この視細胞には大きく分けて 2 つの種類があります。一つ目は、比較的明るいところで働く錐体(すいたい)と呼ばれる視細胞で、もう一つは比較的暗いところで働く杆体(かんたい)と呼ばれる視細胞です※3。我々が「色」を感じることができるのは、この内の錐体という視細胞の働きによるものなのです。この錐体は更に波長感度特性が異なる 3 種の錐体に分類されます。主に可視域波長域の感度が高い S 錐体、主に可視域波長域の感度が高い M 錐体、および主に可視域波長域の感度が高い L 錐体です※4
眼に入射した光によってこれら 3 種の錐体がそれぞれの波長感度特性に応じた刺激を受け、それぞれの刺激の大きさに応じた信号が視神経を経由して脳に伝えられます。脳は、視神経を通じて 3 種の錐体から送られてくる信号の強さの比率から「色」を認識していると言われています。つまり、「色」は最終的に脳によって初めて認識される訳で、それまでのプロセスではまだ「色」というものは成り立っていないのです。

注釈

※1

人間の色覚は、地球上での動物の進化の結果として獲得されてきたものです。動物の種類によって、獲得された色覚の特性は異なっており、人間以外の動物はそれぞれ人間とは異なった「色の世界」にいることになります。人間同士であっても他人の見ている色が実際にどんな色なのかは、正確には確認のしようがありません。(ただ、或る色と或る色の区別がつくかどうかの確認は可能です。) ましてや人間以外の動物がどんな色を見ているのかは、神のみぞ知るということになります。 しかし、各種動物の視細胞や視神経の研究などから、今日ではそれらの動物の或る程度の色覚特性が推測されています。

※2

光学の歴史に偉大な足跡を残したニュートンは、その著書「 Optics(光学)」の中で、「光に色はついていない」という名言を残しています。
For the ray to speak properly are not coloured. In them there is nothing else than a certain power and disposition to stir up a sensation of this or that colour.(正確に言うと、光に色がついている訳ではない。光の中には、この色あの色といった感覚を引き起こす、或る種の力や性質の他には何も無い。)

※3

「杆体(かんたい)」桿体(かんたい)という文字を使うこともあります。錐体のことを錐状体と呼ぶ場合もあります。また、杆体(桿体)のことを杆状体(桿状体)と呼ぶ場合もあります。これらの名称は、それぞれの視細胞の形状に由来しています。錐体細胞は円錐のような尖った形状をしており、杆体(桿体)細胞は棒のような形状をしています。

※4

人間の眼の錐体は S 、M 、L の 3 種に分類されますが、この名前はこれらの錐体の波長感度特性(分光応答度特性)に由来しています。つまり、S 錐体は「短( Short )」波長域、M 錐体は「中( Middle )」波長域、L 錐体は「長( Long )」波長域に主たる感度域を持っていることから名付けられています。

『色』って何だろう?・・・(その1)
・・・・・ 「光」と「感覚」が「色」の存在条件 ・・・・・

光と色の話 第一部

光と色の話 第一部

第11回『色』って何だろう?・・・(その 1 )

・・・・・ 「光」と「感覚」が「色」の存在条件 ・・・・・

はじめに

「光と色の話」と題してこの連載を続けてきましたが、第 1 回から第 10 回までは、ずっと光についての話ばかりでした。この辺りで、光そのものの話は一休みして、今回から色の話に入っていきましょう。(とは言っても、光の話が関係無いという訳ではなく、おおいに関係しています。)
私たちは、この世に生を受けて以来、ず~っと色に囲まれて成長し、生活してきました。まさに「色の海」の中を泳いできたようなもので、殆ど全ての人は無意識的に「色」を認識し、「色」が見えて当たり前、当たり前過ぎて何の不思議も無く生活してきたというのが実情ではないでしょうか。

私たちは、日常生活や業務のあらゆる局面において、色から様々な情報を得て、それによって思考・行動している、と言っても過言ではありません。物質的にも精神的にも色は我々の人間生活の隅々にまで大きな影響を及ぼしています。しかしそれにも関わらず、初等中等教育の段階で色のことを教わるのは、図画工作や美術の授業での主に芸術的な側面からの教育が主で、理科の授業で科学的な側面から色を教わることは、ニュートンによるプリズムの分光実験や虹の発生原理などごく僅かです。また、大学教育でも、特殊な学科を除けば一般教養として色のことを科学的な側面から学ぶ機会は少ないように思います。 ここでは、「色」とは何か?ということを、科学的な側面からできるだけ分かり易く説明することから始めていきたいと思います。

まず最初に、物体の色は物体そのモノに固有の色がついていると思い込んでいる人が多いのではないでしょうか?熟れたイチゴは真っ赤ですし、若葉の色は明るい緑であると信じて疑いません。でも本当にそうなのでしょうか?
「色」とは、後ほど詳しく説明しますが、「光」と「視覚(感覚)」が存在して初めて成り立つものなのですが、「光」と「色」は全く別物である、と思っている人も多いのが実態です。「色」にとって、「光」は切っても切り離せないもので、決して別物ではないのです。この連載で、この辺りの事情をできるだけ実例を挙げながら分かり易く説明していきたいと考えています。

マシンビジョンと「色」

「色」が成り立つためには、「光」と「視覚(動物の眼と脳)」の機能が必要です。この内、眼の機能は、光を複数の波長域に分割して検知するものであり、脳の機能はそれら複数の波長域に対する刺激の相対関係を判断して色を認識するものです。これらの眼と脳が人間特有の特性を備えると「人間の色覚」※1が形成されることになります。
そういう意味で、マシンビジョンにおいては、特殊な場合を除いて、狭い意味の「色」の概念は適用できないといっても良いかもしれません。しかしマシンビジョンにおいても、「色」を判別する場合は多くあり、また更に、光を複数の波長帯に分割し、その波長帯毎の光の強度比を調べるというようなことはよくあることで、このような場合は広い意味の「色」と解釈することも可能なように思います。いずれにしても、「色」の本質を理解することは、マシンビジョンにも通底する場合も多く、マシンビジョンに従事する方々にも参考になるかと思います。

「光」は「色」の源 ・・・・・ 「光」が無ければ「色」は存在しない

我々にモノ(例えばイチゴ)の色が見えるのは、それを照らしている光(可視光)があって、その光がモノ(イチゴ)によって反射され、その光が眼に入ってきているからなのです。
従って、照明光を消して真っ暗にすれば、姿形は勿論、「色」も見えなくなってしまいますね。つまり、照明光は「色」の源、「色」が存在するための前提条件ということができます。

「色」を感じるためには 「眼と脳」の働きが必須

「光」は「色」の源なのですが、「光」がありさえすれば「色」が存在するのでしょうか?否、「光」だけでは「色」は存在しえないのです※2
光源からの光が物体に当って反射され、その反射光が眼に入ってくるのですが、この段階まではただ単なる物理的なエネルギーでしかありません。その光のエネルギーを感じ取るのが眼の網膜上に分布している視細胞と呼ばれる光を感じることができる細胞なのです。眼に入射した光によって刺激を受けた視細胞から、その刺激の大きさに応じた信号が脳に送られ、脳がその信号によって(形や)色を認識するのです。

もう少し詳しく説明します。
この視細胞には大きく分けて 2 つの種類があります。一つ目は、比較的明るいところで働く錐体(すいたい)と呼ばれる視細胞で、もう一つは比較的暗いところで働く杆体(かんたい)と呼ばれる視細胞です※3。我々が「色」を感じることができるのは、この内の錐体という視細胞の働きによるものなのです。この錐体は更に波長感度特性が異なる 3 種の錐体に分類されます。主に可視域波長域の感度が高い S 錐体、主に可視域波長域の感度が高い M 錐体、および主に可視域波長域の感度が高い L 錐体です※4
眼に入射した光によってこれら 3 種の錐体がそれぞれの波長感度特性に応じた刺激を受け、それぞれの刺激の大きさに応じた信号が視神経を経由して脳に伝えられます。脳は、視神経を通じて 3 種の錐体から送られてくる信号の強さの比率から「色」を認識していると言われています。つまり、「色」は最終的に脳によって初めて認識される訳で、それまでのプロセスではまだ「色」というものは成り立っていないのです。

注釈

※1

人間の色覚は、地球上での動物の進化の結果として獲得されてきたものです。動物の種類によって、獲得された色覚の特性は異なっており、人間以外の動物はそれぞれ人間とは異なった「色の世界」にいることになります。人間同士であっても他人の見ている色が実際にどんな色なのかは、正確には確認のしようがありません。(ただ、或る色と或る色の区別がつくかどうかの確認は可能です。) ましてや人間以外の動物がどんな色を見ているのかは、神のみぞ知るということになります。 しかし、各種動物の視細胞や視神経の研究などから、今日ではそれらの動物の或る程度の色覚特性が推測されています。

※2

光学の歴史に偉大な足跡を残したニュートンは、その著書「 Optics(光学)」の中で、「光に色はついていない」という名言を残しています。
For the ray to speak properly are not coloured. In them there is nothing else than a certain power and disposition to stir up a sensation of this or that colour.(正確に言うと、光に色がついている訳ではない。光の中には、この色あの色といった感覚を引き起こす、或る種の力や性質の他には何も無い。)

※3

「杆体(かんたい)」桿体(かんたい)という文字を使うこともあります。錐体のことを錐状体と呼ぶ場合もあります。また、杆体(桿体)のことを杆状体(桿状体)と呼ぶ場合もあります。これらの名称は、それぞれの視細胞の形状に由来しています。錐体細胞は円錐のような尖った形状をしており、杆体(桿体)細胞は棒のような形状をしています。

※4

人間の眼の錐体は S 、M 、L の 3 種に分類されますが、この名前はこれらの錐体の波長感度特性(分光応答度特性)に由来しています。つまり、S 錐体は「短( Short )」波長域、M 錐体は「中( Middle )」波長域、L 錐体は「長( Long )」波長域に主たる感度域を持っていることから名付けられています。

『色』って何だろう?・・・(その1)
・・・・・ 「光」と「感覚」が「色」の存在条件 ・・・・・

光と色の話 第一部

光と色の話 第一部

第11回『色』って何だろう?・・・(その 1 )

・・・・・ 「光」と「感覚」が「色」の存在条件 ・・・・・

はじめに

「光と色の話」と題してこの連載を続けてきましたが、第 1 回から第 10 回までは、ずっと光についての話ばかりでした。この辺りで、光そのものの話は一休みして、今回から色の話に入っていきましょう。(とは言っても、光の話が関係無いという訳ではなく、おおいに関係しています。)
私たちは、この世に生を受けて以来、ず~っと色に囲まれて成長し、生活してきました。まさに「色の海」の中を泳いできたようなもので、殆ど全ての人は無意識的に「色」を認識し、「色」が見えて当たり前、当たり前過ぎて何の不思議も無く生活してきたというのが実情ではないでしょうか。

私たちは、日常生活や業務のあらゆる局面において、色から様々な情報を得て、それによって思考・行動している、と言っても過言ではありません。物質的にも精神的にも色は我々の人間生活の隅々にまで大きな影響を及ぼしています。しかしそれにも関わらず、初等中等教育の段階で色のことを教わるのは、図画工作や美術の授業での主に芸術的な側面からの教育が主で、理科の授業で科学的な側面から色を教わることは、ニュートンによるプリズムの分光実験や虹の発生原理などごく僅かです。また、大学教育でも、特殊な学科を除けば一般教養として色のことを科学的な側面から学ぶ機会は少ないように思います。 ここでは、「色」とは何か?ということを、科学的な側面からできるだけ分かり易く説明することから始めていきたいと思います。

まず最初に、物体の色は物体そのモノに固有の色がついていると思い込んでいる人が多いのではないでしょうか?熟れたイチゴは真っ赤ですし、若葉の色は明るい緑であると信じて疑いません。でも本当にそうなのでしょうか?
「色」とは、後ほど詳しく説明しますが、「光」と「視覚(感覚)」が存在して初めて成り立つものなのですが、「光」と「色」は全く別物である、と思っている人も多いのが実態です。「色」にとって、「光」は切っても切り離せないもので、決して別物ではないのです。この連載で、この辺りの事情をできるだけ実例を挙げながら分かり易く説明していきたいと考えています。

マシンビジョンと「色」

「色」が成り立つためには、「光」と「視覚(動物の眼と脳)」の機能が必要です。この内、眼の機能は、光を複数の波長域に分割して検知するものであり、脳の機能はそれら複数の波長域に対する刺激の相対関係を判断して色を認識するものです。これらの眼と脳が人間特有の特性を備えると「人間の色覚」※1が形成されることになります。
そういう意味で、マシンビジョンにおいては、特殊な場合を除いて、狭い意味の「色」の概念は適用できないといっても良いかもしれません。しかしマシンビジョンにおいても、「色」を判別する場合は多くあり、また更に、光を複数の波長帯に分割し、その波長帯毎の光の強度比を調べるというようなことはよくあることで、このような場合は広い意味の「色」と解釈することも可能なように思います。いずれにしても、「色」の本質を理解することは、マシンビジョンにも通底する場合も多く、マシンビジョンに従事する方々にも参考になるかと思います。

「光」は「色」の源 ・・・・・ 「光」が無ければ「色」は存在しない

我々にモノ(例えばイチゴ)の色が見えるのは、それを照らしている光(可視光)があって、その光がモノ(イチゴ)によって反射され、その光が眼に入ってきているからなのです。
従って、照明光を消して真っ暗にすれば、姿形は勿論、「色」も見えなくなってしまいますね。つまり、照明光は「色」の源、「色」が存在するための前提条件ということができます。

「色」を感じるためには 「眼と脳」の働きが必須

「光」は「色」の源なのですが、「光」がありさえすれば「色」が存在するのでしょうか?否、「光」だけでは「色」は存在しえないのです※2
光源からの光が物体に当って反射され、その反射光が眼に入ってくるのですが、この段階まではただ単なる物理的なエネルギーでしかありません。その光のエネルギーを感じ取るのが眼の網膜上に分布している視細胞と呼ばれる光を感じることができる細胞なのです。眼に入射した光によって刺激を受けた視細胞から、その刺激の大きさに応じた信号が脳に送られ、脳がその信号によって(形や)色を認識するのです。

もう少し詳しく説明します。
この視細胞には大きく分けて 2 つの種類があります。一つ目は、比較的明るいところで働く錐体(すいたい)と呼ばれる視細胞で、もう一つは比較的暗いところで働く杆体(かんたい)と呼ばれる視細胞です※3。我々が「色」を感じることができるのは、この内の錐体という視細胞の働きによるものなのです。この錐体は更に波長感度特性が異なる 3 種の錐体に分類されます。主に可視域波長域の感度が高い S 錐体、主に可視域波長域の感度が高い M 錐体、および主に可視域波長域の感度が高い L 錐体です※4
眼に入射した光によってこれら 3 種の錐体がそれぞれの波長感度特性に応じた刺激を受け、それぞれの刺激の大きさに応じた信号が視神経を経由して脳に伝えられます。脳は、視神経を通じて 3 種の錐体から送られてくる信号の強さの比率から「色」を認識していると言われています。つまり、「色」は最終的に脳によって初めて認識される訳で、それまでのプロセスではまだ「色」というものは成り立っていないのです。

注釈

※1

人間の色覚は、地球上での動物の進化の結果として獲得されてきたものです。動物の種類によって、獲得された色覚の特性は異なっており、人間以外の動物はそれぞれ人間とは異なった「色の世界」にいることになります。人間同士であっても他人の見ている色が実際にどんな色なのかは、正確には確認のしようがありません。(ただ、或る色と或る色の区別がつくかどうかの確認は可能です。) ましてや人間以外の動物がどんな色を見ているのかは、神のみぞ知るということになります。 しかし、各種動物の視細胞や視神経の研究などから、今日ではそれらの動物の或る程度の色覚特性が推測されています。

※2

光学の歴史に偉大な足跡を残したニュートンは、その著書「 Optics(光学)」の中で、「光に色はついていない」という名言を残しています。
For the ray to speak properly are not coloured. In them there is nothing else than a certain power and disposition to stir up a sensation of this or that colour.(正確に言うと、光に色がついている訳ではない。光の中には、この色あの色といった感覚を引き起こす、或る種の力や性質の他には何も無い。)

※3

「杆体(かんたい)」桿体(かんたい)という文字を使うこともあります。錐体のことを錐状体と呼ぶ場合もあります。また、杆体(桿体)のことを杆状体(桿状体)と呼ぶ場合もあります。これらの名称は、それぞれの視細胞の形状に由来しています。錐体細胞は円錐のような尖った形状をしており、杆体(桿体)細胞は棒のような形状をしています。

※4

人間の眼の錐体は S 、M 、L の 3 種に分類されますが、この名前はこれらの錐体の波長感度特性(分光応答度特性)に由来しています。つまり、S 錐体は「短( Short )」波長域、M 錐体は「中( Middle )」波長域、L 錐体は「長( Long )」波長域に主たる感度域を持っていることから名付けられています。

『色』って何だろう?・・・(その1)
・・・・・ 「光」と「感覚」が「色」の存在条件 ・・・・・

Q1.参考になりましたか?
Q2.次回連載を期待されますか?
Q3.連載の感想がありましたらご記入ください。

アンケートにご協力いただきありがとうございました。