光と色の話 第一部

光と色の話 第一部

第18回 混色(その 3 )

・・・・・中間混色 (平均混色)・・・・・

前々回と前回(第 1617 回)は、同時加法混色と減法混色の原理と、実際の応用例についてお話しました。今回は、分類上は加法混色に属するものではありますが、同時加法混色とは異なる混色方式である中間混色の原理についてお話します。中間混色の中には、「継時混色」と「並置混色」という混色方式があります。

同時加法混色は、混色結果の色が元の色よりも明るくなる(エネルギー的に増加する)ことから加法混色と命名された訳ですが、中間混色の場合は混色前の個々の色の面積比に応じて混色結果の色の明るさがそれらの中間(荷重平均)の明るさになることから中間混色(または平均混色)と呼ばれます。数学的には、加重平均も広い意味で加法の一種として扱えることから、加法混色の中に分類されます。

継時混色(回転混色)

玩具のコマに複数の色を塗って回転させると、その中間の色に見えます。例えば、白と黒の場合には、灰色に見え、黄と赤の場合には橙色に見えます。また、塗る色の面積比を変えると、その比に応じて色が変化して見えます。

当たり前といえば当たり前なのですが、なぜこのように混色して見えるのでしょうか?

私たちは、回転するコマを網膜上に結像して見ています。網膜上の特定の位置(錐体)から回転するコマを見ると、塗り分けられた色の各エリアからの色光が時間的に交互に入射してくることになります。この入れ替わりの速度がゆっくりであれば、ヒトはそれぞれの色が交互に入れ替わりながら回転していることを認識できます。しかし、回転が速くなると、錐体の応答速度が追いつかなくなってしまいます。

網膜上の特定エリアの錐体への入射光(光刺激)の変化と、錐体の応答を模式的に示したのが右図です。物理的には入射光(例えば赤色光と緑色光)がステップ関数的に交互に入れ替わって入射するのに対して、 L および M 錐体の生理的応答には時間遅れが発生し、その受信信号が視神経を通じて脳に伝えられます。従って、脳はあたかも赤色光と緑色光が時間的に重なって入射しているように受け取り、それらの中間的な色相である黄色(赤と緑の加法混色)として認識し、明るさも中間の明るさに感じてしまいます。これが継時混色の模式的な解釈です。

コマに塗る色の面積比を変えれば、錐体の応答時間特性(持続時間)も変わりますので、混色の結果は2色の中間で面積比に応じて変化します。

色ゴマ以外にも、色分けした風車(かざぐるま)でもこのような継時混色が見られます。

並置混色(併置混色)

例えば右図のような赤と黄の「市松模様」の図柄を考えてみます。図柄が粗いときには網膜上で赤のエリアと黄のエリアの結像位置が明らかに異なるため、当然別々の色として認識されます。しかし、図柄をどんどん細かくしていけば、ついには図柄が区別できなくなり、赤と黄が渾然一体となって橙色に見えてきます。網膜上での錐体の分布状態で決まる位置的分解能(識別限界)を超える細かいモザイク状の複数色に対しては、それらの色の中間の色として認識される訳で、この中間混色を並置混色(併置混色)と呼んでいます。

並置混色の例( 1 )・・・・カラーテレビやパソコンディスプレイ

私たちの身の周りには、例えば、カラーテレビやパソコンのディスプレイなど、並置混色を応用したものが多くあります。これらの画面は、青 ( B ) 、緑 ( G ) 、
赤 ( R ) の極めて細かい画素が規則的配列で敷き詰められています。画面上で青に表示された領域は青 ( B ) の画素のみが光っており、緑 ( G ) と赤 ( R ) の画素は消えています。同様に、緑に表示されたエリアは緑 ( G ) の画素だけ、赤に表示されたエリアは赤 ( R ) の画素だけが光っています。

また、黄色に表示されたエリアは、緑 ( G ) と赤 ( R ) の画素が光っており、
青 ( B ) の画素は消えています ( Y = G + R ) 。

同様に、マゼンタ色に表示されたエリアは、赤 ( R ) と青 ( B ) の画素が光っており、緑 ( G ) の画素は消えています ( M = R + B ) 。

シアン色のエリアは、青 ( B ) と緑 ( G ) の画素が光っており、赤 ( R ) の画素は消えています ( C = B + G ) 。

また、白に表示されたエリアは、青 ( B ) 、緑 ( G ) 、赤 ( R ) の全ての画素が皆光っています ( W = B + G + R ) 。

各画素 ( B 、G 、R ) の発光強度の比率を変えれば、様々な色が作り出せる仕組みになっています。拡大率の高いルーペで覗いてみれば容易に確認できますので関心のある方は試してみて下さい。

並置混色の例 ( 2 ) ・・・・織物

衣服などの布地で、異なる色の糸を縦糸と横糸にして織り上げた布は、遠くから見ると両者の色が混ざり合った中間の色に見えます。

並置混色の例 ( 3 ) ・・・・点描画

19 世紀に活躍した新印象派の画家、ジョルジュ・スーラ Georges Seurat ( 1859 ~ 1891 ) や ポール・シニヤック Paul Signac ( 1863 ~ 1935 ) が用いた「点描画」という描画手法は、並置混色を絵画に応用したものです。画面全体に亘って何種類かの細かい色点を敷き詰めて絵を構成し、個々の色点の組合せとそれらの密度を変えることによって中間の色調を作り出しています。とにかく根気の要る描画法ですね。

グラビア印刷 ・・・・・ 異なる混色方式の併用

カラー印刷の手法の一つにグラビア印刷という印刷方式があります。グラビア印刷をルーペで拡大してみると、無数の細かい色点で構成されているのがわかります。これを網点と呼んでいますが、これらの網点は、黄 ( Y ) 、マゼンタ ( M ) 、シアン ( C ) 、黒 ( K ) の 4 色のインクで印刷されています、異種の色の網点が重なった部分では減法混色が起きており、様々な色が合成されています。また、私たちはこれら細かい網点の集合を、ある面積的広がりの中で絵として眺めていますので、局所局所で減法混色された色光が同時に並置混色されて認識されることになります。

物理的混色 と 生理的混色

前々回(第 16 回)の冒頭での混色の分類の話は、減法と加法という観点からの分類でした。着眼点を変えて考えると、別の分類も考えられます。減法混色と同時加法混色は、その混色過程は完全に物理的なものであって眼の外部で混色された結果としての色光が目に入射して色として認識されるものです。

一方、中間混色(継時混色と並置混色)は個々の色を示す色光は物理的には別個に目に入射するのですが、眼(および脳)において生理的に混色されて認識されるものです。継時混色は錐体群の時間応答分解能を越えた領域で、また並置混色は錐体群の位置的分解能を越えた領域で生理的な混色が起こると言えます。

混色(その3)
・・・・・ 中間混色 (平均混色) ・・・・・・

光と色の話 第一部

光と色の話 第一部

第18回 混色(その 3 )

・・・・・中間混色 (平均混色)・・・・・

前々回と前回(第 1617 回)は、同時加法混色と減法混色の原理と、実際の応用例についてお話しました。今回は、分類上は加法混色に属するものではありますが、同時加法混色とは異なる混色方式である中間混色の原理についてお話します。中間混色の中には、「継時混色」と「並置混色」という混色方式があります。

同時加法混色は、混色結果の色が元の色よりも明るくなる(エネルギー的に増加する)ことから加法混色と命名された訳ですが、中間混色の場合は混色前の個々の色の面積比に応じて混色結果の色の明るさがそれらの中間(荷重平均)の明るさになることから中間混色(または平均混色)と呼ばれます。数学的には、加重平均も広い意味で加法の一種として扱えることから、加法混色の中に分類されます。

継時混色(回転混色)

玩具のコマに複数の色を塗って回転させると、その中間の色に見えます。例えば、白と黒の場合には、灰色に見え、黄と赤の場合には橙色に見えます。また、塗る色の面積比を変えると、その比に応じて色が変化して見えます。

当たり前といえば当たり前なのですが、なぜこのように混色して見えるのでしょうか?

私たちは、回転するコマを網膜上に結像して見ています。網膜上の特定の位置(錐体)から回転するコマを見ると、塗り分けられた色の各エリアからの色光が時間的に交互に入射してくることになります。この入れ替わりの速度がゆっくりであれば、ヒトはそれぞれの色が交互に入れ替わりながら回転していることを認識できます。しかし、回転が速くなると、錐体の応答速度が追いつかなくなってしまいます。

網膜上の特定エリアの錐体への入射光(光刺激)の変化と、錐体の応答を模式的に示したのが右図です。物理的には入射光(例えば赤色光と緑色光)がステップ関数的に交互に入れ替わって入射するのに対して、 L および M 錐体の生理的応答には時間遅れが発生し、その受信信号が視神経を通じて脳に伝えられます。従って、脳はあたかも赤色光と緑色光が時間的に重なって入射しているように受け取り、それらの中間的な色相である黄色(赤と緑の加法混色)として認識し、明るさも中間の明るさに感じてしまいます。これが継時混色の模式的な解釈です。

コマに塗る色の面積比を変えれば、錐体の応答時間特性(持続時間)も変わりますので、混色の結果は2色の中間で面積比に応じて変化します。

色ゴマ以外にも、色分けした風車(かざぐるま)でもこのような継時混色が見られます。

並置混色(併置混色)

例えば右図のような赤と黄の「市松模様」の図柄を考えてみます。図柄が粗いときには網膜上で赤のエリアと黄のエリアの結像位置が明らかに異なるため、当然別々の色として認識されます。しかし、図柄をどんどん細かくしていけば、ついには図柄が区別できなくなり、赤と黄が渾然一体となって橙色に見えてきます。網膜上での錐体の分布状態で決まる位置的分解能(識別限界)を超える細かいモザイク状の複数色に対しては、それらの色の中間の色として認識される訳で、この中間混色を並置混色(併置混色)と呼んでいます。

並置混色の例( 1 )・・・・カラーテレビやパソコンディスプレイ

私たちの身の周りには、例えば、カラーテレビやパソコンのディスプレイなど、並置混色を応用したものが多くあります。これらの画面は、青 ( B ) 、緑 ( G ) 、
赤 ( R ) の極めて細かい画素が規則的配列で敷き詰められています。画面上で青に表示された領域は青 ( B ) の画素のみが光っており、緑 ( G ) と赤 ( R ) の画素は消えています。同様に、緑に表示されたエリアは緑 ( G ) の画素だけ、赤に表示されたエリアは赤 ( R ) の画素だけが光っています。

また、黄色に表示されたエリアは、緑 ( G ) と赤 ( R ) の画素が光っており、
青 ( B ) の画素は消えています ( Y = G + R ) 。

同様に、マゼンタ色に表示されたエリアは、赤 ( R ) と青 ( B ) の画素が光っており、緑 ( G ) の画素は消えています ( M = R + B ) 。

シアン色のエリアは、青 ( B ) と緑 ( G ) の画素が光っており、赤 ( R ) の画素は消えています ( C = B + G ) 。

また、白に表示されたエリアは、青 ( B ) 、緑 ( G ) 、赤 ( R ) の全ての画素が皆光っています ( W = B + G + R ) 。

各画素 ( B 、G 、R ) の発光強度の比率を変えれば、様々な色が作り出せる仕組みになっています。拡大率の高いルーペで覗いてみれば容易に確認できますので関心のある方は試してみて下さい。

並置混色の例 ( 2 ) ・・・・織物

衣服などの布地で、異なる色の糸を縦糸と横糸にして織り上げた布は、遠くから見ると両者の色が混ざり合った中間の色に見えます。

並置混色の例 ( 3 ) ・・・・点描画

19 世紀に活躍した新印象派の画家、ジョルジュ・スーラ Georges Seurat ( 1859 ~ 1891 ) や ポール・シニヤック Paul Signac ( 1863 ~ 1935 ) が用いた「点描画」という描画手法は、並置混色を絵画に応用したものです。画面全体に亘って何種類かの細かい色点を敷き詰めて絵を構成し、個々の色点の組合せとそれらの密度を変えることによって中間の色調を作り出しています。とにかく根気の要る描画法ですね。

グラビア印刷 ・・・・・ 異なる混色方式の併用

カラー印刷の手法の一つにグラビア印刷という印刷方式があります。グラビア印刷をルーペで拡大してみると、無数の細かい色点で構成されているのがわかります。これを網点と呼んでいますが、これらの網点は、黄 ( Y ) 、マゼンタ ( M ) 、シアン ( C ) 、黒 ( K ) の 4 色のインクで印刷されています、異種の色の網点が重なった部分では減法混色が起きており、様々な色が合成されています。また、私たちはこれら細かい網点の集合を、ある面積的広がりの中で絵として眺めていますので、局所局所で減法混色された色光が同時に並置混色されて認識されることになります。

物理的混色 と 生理的混色

前々回(第 16 回)の冒頭での混色の分類の話は、減法と加法という観点からの分類でした。着眼点を変えて考えると、別の分類も考えられます。減法混色と同時加法混色は、その混色過程は完全に物理的なものであって眼の外部で混色された結果としての色光が目に入射して色として認識されるものです。

一方、中間混色(継時混色と並置混色)は個々の色を示す色光は物理的には別個に目に入射するのですが、眼(および脳)において生理的に混色されて認識されるものです。継時混色は錐体群の時間応答分解能を越えた領域で、また並置混色は錐体群の位置的分解能を越えた領域で生理的な混色が起こると言えます。

混色(その3)
・・・・・ 中間混色 (平均混色) ・・・・・・

Q1.参考になりましたか?
Q2.次回連載を期待されますか?
Q3.連載の感想がありましたらご記入ください。

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