光と色の話 第一部

光と色の話 第一部

第33回 照明光の色味

・・・・・ 色温度 と 相関色温度 ・・・・・

照明の関係する分野では、光の色味を表すひとつの尺度として「色温度」というコトバがよく使用されます。例えば、白熱電球のような赤味を帯びた光の色は色温度が低い、また、昼光色蛍光ランプのように青白味を帯びた光の色は色温度が高い、というような言い方がされます。

光の色については、これまでの連載の中で説明してきましたように、例えば XYZ 表色系では、色度座標値 ( x , y ) を指定することによって、客観的かつ正確に光の色を定義することができます。しかし、色度座標の 2 つの数値 ( x , y ) を聞いて、その色をすぐに連想できる人は(色彩の専門家を除けば)殆ど居ません。人間は本来、1 次元の数字なら直感的に理解しやすいのですが、2 次元、 3 次元と、次元数が多くなるほど、頭の中で理解するのは難しくなります。従って、多少正確さを犠牲にして も 1 つの数字だけで大雑把な色味を表現できるなら、実用的には大きな価値があると考えられます。ここに「色温度」というものが、世の中で広く使われる大きな理由がある訳です。

『色温度』の概念の歴史的背景

「色温度」の正確な定義を説明する前に、そもそも「色温度」という概念がどのようにして発生してきたのか、という歴史的背景からお話した方が解り易いのではないかと思います。

この「色温度」という概念は、18 世紀半ばから 19 世紀にかけて英国を中心に起こった産業革命における製鉄産業にその起源を求めることができます。製鉄は、原料となる砂鉄や鉄鉱石を加熱・熔融・製錬して、鉄鋼として仕上げる訳ですが、産業革命以前の製鉄産業は家内工業的で規模も小さく、製鉄技術も未熟であったため、製造される鉄鋼の品質もバラツキが大きいものでした。しかし産業革命の進行とともに、高品質な鉄鋼を大量に製造することが要求されるようになってきました。
鉄鋼の製造過程では、熔鉱炉の中で加熱熔融された鉄・・・日本の製鉄業界ではこの熔融(液化)した鉄のことを「湯」と呼んでいるようです・・・の温度を適切にコントロールしながら不純物を取り除いて徐々に冷却して固体化していくことが求められます。

この温度管理が拙いと出来上がる鉄の品質が確保できないということになります。当然、熔けた鉄の温度ですから、数千度という高温で、当時これを測定することはそれほど簡単なことではありませんでした。研究所などの実験室では数千度の高温を測定することはできたのでしょうが、製鉄の現場では、そう簡単なことではなかったと考えられ、更に、作業者が熔けた「湯」の温度を直接測るとなると、危険を伴うことにもなります。
そこで、熔融した鉄(湯)の温度と色の間に密接な関係があることに着目し研究した結果、「色温度」という概念ができた訳です※1

黒体(完全放射体)の『温度』と『色』の関係

製鉄の話自体は私たちの日常生活経験とは馴染みが薄いのですが、私たちの身の周りで「湯」(熔融した鉄)の特性に近いものとして、火鉢の炭火やストーブの石炭などの温度と色の関係があります。赤黒い色をした炭火に空気(酸素)を吹き込んでやると盛んに燃焼して温度が上がり、それに伴って赤黒かった炭火の色がオレンジ色味を帯びてきます。
これらの熱源は、加熱することによって光を放出しますので熱放射型光源と呼ばれます。この熱放射型光源の理想特性を備えた放射源(光源)が「黒体」と呼ばれるものです。
黒体」は「完全放射体」と呼ばれることもあります。

「黒体」とは、外部からその物体に入射する電磁波を、波長の如何にかかわらず全て完全に吸収してしまう物体のことで、反射成分が全く無いので常温では勿論「真っ黒」です。現実の物体では、「真っ黒」に見えていても、わずかながら反射成分がありますので、完全な「黒体」は実在せず、理論上の仮想物体ということになります。
木炭、石炭、熔けた鉄などは、実在する物の内で比較的「黒体」に近いものということができます。

この「黒体」を加熱していきますと、その温度に応じて熱エネルギーを電磁波の形で外部へ放出します。この放出される電磁波の分光分布が黒体の温度(絶対温度)の上昇に伴って変化し、その色が、赤黒 → 橙色 → 黄橙 → 黄 → 白 → 青白 というふうに変わっていきます。

この変化を理論的に研究・解明したのがノーベル賞を受賞したドイツの物理学者プランク( M. Planck )です。
プランクによって導出された、黒体から放出される電磁波の分光分布特性を記述する数式(プランクの放射式:上図参照)は、一見非常に複雑ですが、この式の重要な意味は、黒体の絶対温度 T (単位 K :ケルビン)※2が決まれば、放出される電磁波の分光分布が一義的に決まる、という所です。

黒体軌跡と色温度( TC

このプランクの放射式を具体的にグラフに表したものが右図で、絶対温度別の分光分布曲線を示しています。温度が高いほど強いエネルギーを放出し、温度が低くなるにつれて放出エネルギーが減少するとともにピークの波長が長波長側にシフトしています。
この特性グラフを「色」という視点で見ると、可視域( 380 ~ 780 nm )が対象になり、可視域内でのグラフの傾斜と色が密接な関係を持っています。

例えば絶対温度が 10000 K の方が 8000 K よりもグラフの傾斜が急になっていますが、可視域の単色光スペクトルの色を考え併せると 10000 K の方が 8000 K よりも青味が強いというのが分かります。ただ、このグラフからは、温度が低くなると横軸に収斂していき、殆ど見分けがつかなくなってしまいますので、このグラフの可視域での傾斜を相対的に比較できるように、それぞれの温度における波長
555 nm での値を 1 としてグラフを書き直したのが右図(可視域のみを表示)です。
これを見ると、温度の変化に伴ってグラフの傾斜が連続的に変化しているのが分かります。
2000 K では短波長側が非常に弱く波長が長くなるほど急速に強くなっており、赤味が非常に強いことを示しています。6000 K 位になると、グラフは波長依存性が少なくほぼ平坦になっており、色味が無くなって(白く見えて)います。更に温度が上がると傾斜の向きが逆転し、青味が強くなっていくことが分かります。

様々な絶対温度における黒体からの放出光に対して、相対分光分布データから色度 ( x , y ) を計算して x y 色度図上に示したのが右図です。
黒体の絶対温度をパラメータとして、温度上昇とともに色度図の右下の赤エリアから 橙 → 黄 → 黄白 → 白 → 青白 という様に曲線の軌跡を描いています。
これを黒体軌跡と呼んでいます。つまり、黒体においては、その絶対温度値を指定すれば、色度 ( x , y ) が一義的に決まるため、温度という 1 次元の数値のみで色味が容易に連想でき直感的に分かり易い、という大きなメリットが出てくる訳です。つまり、黒体に対して、その色(色度)を絶対温度という一つの数値で指し示したものが「色温度」(量記号 TC )という訳です。

相関色温度( TCP

黒体は理論上の仮想物体ですが、現実に存在する様々な「白色」光源の色度を、この図に書き加えるとどうなるでしょうか。一般には、その色度点は黒体軌跡の線上に来ることは稀で、殆どの場合、黒体軌跡の上下近傍に表示されます。例えば、昼白色蛍光ランプの場合は、黒体軌跡の色温度 TC = 5000 K の点の少し下の
( x , y ) = ( 0.344 , 0.349 ) の近辺にプロットされます。

私たちの身の周りには、黒体とは異なる発光原理に基づく多種多様な「白色光」があり、それらの白色光の色味が私たちの生活に密接な影響を及ぼしています。このような様々な種類の「白色光」においてもその色味を 1 個の数値のみで表現できれば、非常に分かり易くなります。そこで、その光源の色度点の“最も近く”にある黒体軌跡の色温度値を“借用”すれば、厳密さはさておいても、光源の色味を 1 個の数値のみで表現できることになります。このような考え方から、黒体軌跡の真上に色度点が来ない白色光源について、黒体の色温度値を借用して色味を表現する方法を『相関色温度』(量記号 TCP )と言っています。

蛍光ランプは、黒体(熱放射型光源)とは全く異なる発光原理によるもので、同じような「白色」に見えていても黒体とは全く異なる分光分布特性を持っているため、その色度点は一般には黒体軌跡の真上には来ないことが多いのです。勿論昼白色蛍光ランプの発光部電極の絶対温度が 5000 K になっている訳ではありません。ただ絶対温度 5000 K の黒体の発光色に非常に近いということを言っているに過ぎません。

ここで、色度点が“最も近い”ということはどういうことでしょうか? 色味の遠近については、本連載の前回(第 32 回)にお話ししました、「色差」で評価することになります。ということは、均等色度図 ( UCS:Uniform Chromaticity Scale ) で論じる必要があり、相関色温度の定義には CIE 1960 UCS 色度図( uv 色度図)が使用されることになっています。(【第 32 回】の註釈※2
均等色度図である uv 色度図上に描かれた黒体軌跡に直交する線分を引けば、この線分上の色度点から“最も近い”黒体軌跡の位置は線分と軌跡との交点になります。つまり、この線分上のすべての色度点の相関色温度値が、この交点に対応する黒体の「色温度」値で代表される訳で、この線分を等色温度線と言います。

uv 色度図上に描かれた黒体軌跡と等色温度線を元の x y 色度図へ戻してやれば、下図のようになります。uv 色度図で黒体軌跡に直交していた等色温度線は、x y 色度図では斜めに交差しています。

黒体軌跡の上下両側にほぼ平行な曲線が描かれていますが、これらの曲線は、等偏差線と呼ばれ、(等色差空間の uv 色度図上で)黒体軌跡からの色差 ( duv ) が等距離にある色度点の軌跡を描いたものです。※3

黒体軌跡の上方(緑色方向)は duv > 0
下方(赤紫色方向)は duv < 0

で表すことになっています。色度点の位置が黒体軌跡から上 ( duv > 0 ) 方向にずれるほど緑色味が強まり、
下 ( duv < 0 ) 方向にずれるほど赤紫色味が強まっていきます。

このことからお分かり頂けると思いますが、相関色温度は、 その色度点から“最も近い”黒体軌跡の色温度値を借用する訳ですから、その光の色度点が黒体軌跡から遠ざかれば遠ざかるほど、黒体の色から離れて行き、色温度値から色味を連想できるという意味が薄れていきます。

そのため、相関色温度という概念が適用できるのは、およそ

-0.02 ≦ duv ≦ +0.02

の範囲と決められています。( JIS Z 8725 :1999 )

『相関色温度』の利便性の直感的理解

地球上の或る特定の場所を指定する場合、例えば、東経 135.758 ° 北緯 34.991 ° と表現すれば極めて正確に指定することができます。しかし、手元に地図が無ければ、殆どの人は頭の中でその場所がどこなのかすぐにはピンと来ません。しかし「東海道本線の京都駅の近く」と言えば大雑把ですが、日本人なら殆どの人が直感的にわかりますし、更に、京都駅から北へ 400 m と言えば、ほぼ正確にその場所が特定できます。

このように、色を正確に指定するためには、一般には色度座標値 ( x , y ) の 2 つの数値が必要ですが、白色光が対象である場合には、(相関)色温度を使用すれば、(正確さは多少犠牲にしても)1 つの数値だけで、おおよその色味が容易に連想できるという実用上の大きなメリットがある訳です。これが、「(相関)色温度」というものが世の中で盛んに使われる大きな理由であるということができます。

ただし、相関色温度を用いて正確にその色を指定したい場合には、やはり 2 つの数値が必要で、黒体軌跡からの偏差 duv を添えてやる必要があります。※4

夜空に輝く星(恒星)には様々な色がありますが、星の色からその星の表面温度が推測できる、ということを聞いた人も多いと思います。これも「色温度」の考え方によっています。※5

注釈

※1 「色温度」の先駆者

「色温度」という概念の形成に関して有名なのは、英国の製鉄技術者のベッセマー
( Sir Henry Bessemer, 1813 ~ 1898 )という人と伝えられています。

※2 絶対温度

私たちが日常生活でよく使うのはセルシウス温度、いわゆる摂氏温度(単位:℃)で、例えば、標準気圧下で水の沸騰温度は 100 ℃、氷の融点は 0 ℃、標準的体温は 36.5 ℃ ということはお馴染みですね。これに対して絶対温度は、物質を構成する原子・分子の熱運動を理論付けた熱力学理論によって定義された温度であり、単位は K(ケルビン)で表示されます。絶対零度 ( 0 K ) では、原子・分子の振動が理論上の最低になった状態で、温度上昇に伴って、原子・分子の振動が活発になっていきます。摂氏温度 ( t ℃ ) と絶対温度 ( T K ) との間には次の関係があります。

絶対温度 T [ K ] = 摂氏温度 t [ ℃ ] + 273.15

従って、絶対温度で表現すると、氷の溶融温度は 273.15 K 、水の沸騰温度は、373.15 K 、体温は 310 K 弱、ということになります。

※3 黒体軌跡からの偏差 duv の定義 ( JIS Z 8725:1999 )

us , vs : 光源の CIE 1960 UCS 色度座標 ( uv 座標) の値
u0, v0 : CIE 1960 UCS 色度図上で、光源の色度座標に最も近い黒体軌跡上の座標

※4 「色温度」 と 「相関色温度」 の使い分け

世の中一般に、「相関色温度」のこともただ単に「色温度」と表現する場合が多く見受けられます。
いちいち“相関“という言葉を付けるのは煩わしい感じが付き纏いますので、非公式な会話等ではやむを得ないとは思いますが、上述のように「色温度」と「相関色温度」は全く定義が異なりますので、公式な場ではその定義に則って用語を使い分けるべきです。

※5 恒星の色と表面温度

例えば、夜空にひときわ明るく輝くシリウス(おおいぬ座)はやや青白く見え、表面温度(絶対温度)は 10000 K 弱、私たちの太陽系の太陽(真昼の快晴時)はやや黄味を帯びた白色に見え、6000 K 前後、べテルギウス(オリオン座)はかなり赤っぽく見え、3500 K 前後と言われています。

恒星は純粋の熱放射型光源とは言い切れず、また、介在する気体層での吸収等もあって単純ではないのですが、概ね熱放射型光源に準じていると考えられ、星の色による相関色温度から表面の絶対温度が推定できる訳です。各種恒星のスペクトル型(分光分布)毎に表面温度がおおよそ上表のように考えられています。

余談ながら、このスペクトル型の順序として、表面温度が高い方から順に、次のような覚え方が有名です。
Oh, Be A Fine Girl, Kiss Me ! または Oh, Beautiful And Fine Girl, Kiss Me !

照明光の色味
・・・・・ 色温度 と 相関色温度 ・・・・・

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第33回 照明光の色味

・・・・・ 色温度 と 相関色温度 ・・・・・

照明の関係する分野では、光の色味を表すひとつの尺度として「色温度」というコトバがよく使用されます。例えば、白熱電球のような赤味を帯びた光の色は色温度が低い、また、昼光色蛍光ランプのように青白味を帯びた光の色は色温度が高い、というような言い方がされます。

光の色については、これまでの連載の中で説明してきましたように、例えば XYZ 表色系では、色度座標値 ( x , y ) を指定することによって、客観的かつ正確に光の色を定義することができます。しかし、色度座標の 2 つの数値 ( x , y ) を聞いて、その色をすぐに連想できる人は(色彩の専門家を除けば)殆ど居ません。人間は本来、1 次元の数字なら直感的に理解しやすいのですが、2 次元、 3 次元と、次元数が多くなるほど、頭の中で理解するのは難しくなります。従って、多少正確さを犠牲にして も 1 つの数字だけで大雑把な色味を表現できるなら、実用的には大きな価値があると考えられます。ここに「色温度」というものが、世の中で広く使われる大きな理由がある訳です。

『色温度』の概念の歴史的背景

「色温度」の正確な定義を説明する前に、そもそも「色温度」という概念がどのようにして発生してきたのか、という歴史的背景からお話した方が解り易いのではないかと思います。

この「色温度」という概念は、18 世紀半ばから 19 世紀にかけて英国を中心に起こった産業革命における製鉄産業にその起源を求めることができます。製鉄は、原料となる砂鉄や鉄鉱石を加熱・熔融・製錬して、鉄鋼として仕上げる訳ですが、産業革命以前の製鉄産業は家内工業的で規模も小さく、製鉄技術も未熟であったため、製造される鉄鋼の品質もバラツキが大きいものでした。しかし産業革命の進行とともに、高品質な鉄鋼を大量に製造することが要求されるようになってきました。
鉄鋼の製造過程では、熔鉱炉の中で加熱熔融された鉄・・・日本の製鉄業界ではこの熔融(液化)した鉄のことを「湯」と呼んでいるようです・・・の温度を適切にコントロールしながら不純物を取り除いて徐々に冷却して固体化していくことが求められます。

この温度管理が拙いと出来上がる鉄の品質が確保できないということになります。当然、熔けた鉄の温度ですから、数千度という高温で、当時これを測定することはそれほど簡単なことではありませんでした。研究所などの実験室では数千度の高温を測定することはできたのでしょうが、製鉄の現場では、そう簡単なことではなかったと考えられ、更に、作業者が熔けた「湯」の温度を直接測るとなると、危険を伴うことにもなります。
そこで、熔融した鉄(湯)の温度と色の間に密接な関係があることに着目し研究した結果、「色温度」という概念ができた訳です※1

黒体(完全放射体)の『温度』と『色』の関係

製鉄の話自体は私たちの日常生活経験とは馴染みが薄いのですが、私たちの身の周りで「湯」(熔融した鉄)の特性に近いものとして、火鉢の炭火やストーブの石炭などの温度と色の関係があります。赤黒い色をした炭火に空気(酸素)を吹き込んでやると盛んに燃焼して温度が上がり、それに伴って赤黒かった炭火の色がオレンジ色味を帯びてきます。
これらの熱源は、加熱することによって光を放出しますので熱放射型光源と呼ばれます。この熱放射型光源の理想特性を備えた放射源(光源)が「黒体」と呼ばれるものです。
黒体」は「完全放射体」と呼ばれることもあります。

「黒体」とは、外部からその物体に入射する電磁波を、波長の如何にかかわらず全て完全に吸収してしまう物体のことで、反射成分が全く無いので常温では勿論「真っ黒」です。現実の物体では、「真っ黒」に見えていても、わずかながら反射成分がありますので、完全な「黒体」は実在せず、理論上の仮想物体ということになります。
木炭、石炭、熔けた鉄などは、実在する物の内で比較的「黒体」に近いものということができます。

この「黒体」を加熱していきますと、その温度に応じて熱エネルギーを電磁波の形で外部へ放出します。この放出される電磁波の分光分布が黒体の温度(絶対温度)の上昇に伴って変化し、その色が、赤黒 → 橙色 → 黄橙 → 黄 → 白 → 青白 というふうに変わっていきます。

この変化を理論的に研究・解明したのがノーベル賞を受賞したドイツの物理学者プランク( M. Planck )です。
プランクによって導出された、黒体から放出される電磁波の分光分布特性を記述する数式(プランクの放射式:上図参照)は、一見非常に複雑ですが、この式の重要な意味は、黒体の絶対温度 T (単位 K :ケルビン)※2が決まれば、放出される電磁波の分光分布が一義的に決まる、という所です。

黒体軌跡と色温度( TC

このプランクの放射式を具体的にグラフに表したものが右図で、絶対温度別の分光分布曲線を示しています。温度が高いほど強いエネルギーを放出し、温度が低くなるにつれて放出エネルギーが減少するとともにピークの波長が長波長側にシフトしています。
この特性グラフを「色」という視点で見ると、可視域( 380 ~ 780 nm )が対象になり、可視域内でのグラフの傾斜と色が密接な関係を持っています。

例えば絶対温度が 10000 K の方が 8000 K よりもグラフの傾斜が急になっていますが、可視域の単色光スペクトルの色を考え併せると 10000 K の方が 8000 K よりも青味が強いというのが分かります。ただ、このグラフからは、温度が低くなると横軸に収斂していき、殆ど見分けがつかなくなってしまいますので、このグラフの可視域での傾斜を相対的に比較できるように、それぞれの温度における波長
555 nm での値を 1 としてグラフを書き直したのが右図(可視域のみを表示)です。
これを見ると、温度の変化に伴ってグラフの傾斜が連続的に変化しているのが分かります。
2000 K では短波長側が非常に弱く波長が長くなるほど急速に強くなっており、赤味が非常に強いことを示しています。6000 K 位になると、グラフは波長依存性が少なくほぼ平坦になっており、色味が無くなって(白く見えて)います。更に温度が上がると傾斜の向きが逆転し、青味が強くなっていくことが分かります。

様々な絶対温度における黒体からの放出光に対して、相対分光分布データから色度 ( x , y ) を計算して x y 色度図上に示したのが右図です。
黒体の絶対温度をパラメータとして、温度上昇とともに色度図の右下の赤エリアから 橙 → 黄 → 黄白 → 白 → 青白 という様に曲線の軌跡を描いています。
これを黒体軌跡と呼んでいます。つまり、黒体においては、その絶対温度値を指定すれば、色度 ( x , y ) が一義的に決まるため、温度という 1 次元の数値のみで色味が容易に連想でき直感的に分かり易い、という大きなメリットが出てくる訳です。つまり、黒体に対して、その色(色度)を絶対温度という一つの数値で指し示したものが「色温度」(量記号 TC )という訳です。

相関色温度( TCP

黒体は理論上の仮想物体ですが、現実に存在する様々な「白色」光源の色度を、この図に書き加えるとどうなるでしょうか。一般には、その色度点は黒体軌跡の線上に来ることは稀で、殆どの場合、黒体軌跡の上下近傍に表示されます。例えば、昼白色蛍光ランプの場合は、黒体軌跡の色温度 TC = 5000 K の点の少し下の
( x , y ) = ( 0.344 , 0.349 ) の近辺にプロットされます。

私たちの身の周りには、黒体とは異なる発光原理に基づく多種多様な「白色光」があり、それらの白色光の色味が私たちの生活に密接な影響を及ぼしています。このような様々な種類の「白色光」においてもその色味を 1 個の数値のみで表現できれば、非常に分かり易くなります。そこで、その光源の色度点の“最も近く”にある黒体軌跡の色温度値を“借用”すれば、厳密さはさておいても、光源の色味を 1 個の数値のみで表現できることになります。このような考え方から、黒体軌跡の真上に色度点が来ない白色光源について、黒体の色温度値を借用して色味を表現する方法を『相関色温度』(量記号 TCP )と言っています。

蛍光ランプは、黒体(熱放射型光源)とは全く異なる発光原理によるもので、同じような「白色」に見えていても黒体とは全く異なる分光分布特性を持っているため、その色度点は一般には黒体軌跡の真上には来ないことが多いのです。勿論昼白色蛍光ランプの発光部電極の絶対温度が 5000 K になっている訳ではありません。ただ絶対温度 5000 K の黒体の発光色に非常に近いということを言っているに過ぎません。

ここで、色度点が“最も近い”ということはどういうことでしょうか? 色味の遠近については、本連載の前回(第 32 回)にお話ししました、「色差」で評価することになります。ということは、均等色度図 ( UCS:Uniform Chromaticity Scale ) で論じる必要があり、相関色温度の定義には CIE 1960 UCS 色度図( uv 色度図)が使用されることになっています。(【第 32 回】の註釈※2
均等色度図である uv 色度図上に描かれた黒体軌跡に直交する線分を引けば、この線分上の色度点から“最も近い”黒体軌跡の位置は線分と軌跡との交点になります。つまり、この線分上のすべての色度点の相関色温度値が、この交点に対応する黒体の「色温度」値で代表される訳で、この線分を等色温度線と言います。

uv 色度図上に描かれた黒体軌跡と等色温度線を元の x y 色度図へ戻してやれば、下図のようになります。uv 色度図で黒体軌跡に直交していた等色温度線は、x y 色度図では斜めに交差しています。

黒体軌跡の上下両側にほぼ平行な曲線が描かれていますが、これらの曲線は、等偏差線と呼ばれ、(等色差空間の uv 色度図上で)黒体軌跡からの色差 ( duv ) が等距離にある色度点の軌跡を描いたものです。※3

黒体軌跡の上方(緑色方向)は duv > 0
下方(赤紫色方向)は duv < 0

で表すことになっています。色度点の位置が黒体軌跡から上 ( duv > 0 ) 方向にずれるほど緑色味が強まり、
下 ( duv < 0 ) 方向にずれるほど赤紫色味が強まっていきます。

このことからお分かり頂けると思いますが、相関色温度は、 その色度点から“最も近い”黒体軌跡の色温度値を借用する訳ですから、その光の色度点が黒体軌跡から遠ざかれば遠ざかるほど、黒体の色から離れて行き、色温度値から色味を連想できるという意味が薄れていきます。

そのため、相関色温度という概念が適用できるのは、およそ

-0.02 ≦ duv ≦ +0.02

の範囲と決められています。( JIS Z 8725 :1999 )

『相関色温度』の利便性の直感的理解

地球上の或る特定の場所を指定する場合、例えば、東経 135.758 ° 北緯 34.991 ° と表現すれば極めて正確に指定することができます。しかし、手元に地図が無ければ、殆どの人は頭の中でその場所がどこなのかすぐにはピンと来ません。しかし「東海道本線の京都駅の近く」と言えば大雑把ですが、日本人なら殆どの人が直感的にわかりますし、更に、京都駅から北へ 400 m と言えば、ほぼ正確にその場所が特定できます。

このように、色を正確に指定するためには、一般には色度座標値 ( x , y ) の 2 つの数値が必要ですが、白色光が対象である場合には、(相関)色温度を使用すれば、(正確さは多少犠牲にしても)1 つの数値だけで、おおよその色味が容易に連想できるという実用上の大きなメリットがある訳です。これが、「(相関)色温度」というものが世の中で盛んに使われる大きな理由であるということができます。

ただし、相関色温度を用いて正確にその色を指定したい場合には、やはり 2 つの数値が必要で、黒体軌跡からの偏差 duv を添えてやる必要があります。※4

夜空に輝く星(恒星)には様々な色がありますが、星の色からその星の表面温度が推測できる、ということを聞いた人も多いと思います。これも「色温度」の考え方によっています。※5

注釈

※1 「色温度」の先駆者

「色温度」という概念の形成に関して有名なのは、英国の製鉄技術者のベッセマー
( Sir Henry Bessemer, 1813 ~ 1898 )という人と伝えられています。

※2 絶対温度

私たちが日常生活でよく使うのはセルシウス温度、いわゆる摂氏温度(単位:℃)で、例えば、標準気圧下で水の沸騰温度は 100 ℃、氷の融点は 0 ℃、標準的体温は 36.5 ℃ ということはお馴染みですね。これに対して絶対温度は、物質を構成する原子・分子の熱運動を理論付けた熱力学理論によって定義された温度であり、単位は K(ケルビン)で表示されます。絶対零度 ( 0 K ) では、原子・分子の振動が理論上の最低になった状態で、温度上昇に伴って、原子・分子の振動が活発になっていきます。摂氏温度 ( t ℃ ) と絶対温度 ( T K ) との間には次の関係があります。

絶対温度 T [ K ] = 摂氏温度 t [ ℃ ] + 273.15

従って、絶対温度で表現すると、氷の溶融温度は 273.15 K 、水の沸騰温度は、373.15 K 、体温は 310 K 弱、ということになります。

※3 黒体軌跡からの偏差 duv の定義 ( JIS Z 8725:1999 )

us , vs : 光源の CIE 1960 UCS 色度座標 ( uv 座標) の値
u0, v0 : CIE 1960 UCS 色度図上で、光源の色度座標に最も近い黒体軌跡上の座標

※4 「色温度」 と 「相関色温度」 の使い分け

世の中一般に、「相関色温度」のこともただ単に「色温度」と表現する場合が多く見受けられます。
いちいち“相関“という言葉を付けるのは煩わしい感じが付き纏いますので、非公式な会話等ではやむを得ないとは思いますが、上述のように「色温度」と「相関色温度」は全く定義が異なりますので、公式な場ではその定義に則って用語を使い分けるべきです。

※5 恒星の色と表面温度

例えば、夜空にひときわ明るく輝くシリウス(おおいぬ座)はやや青白く見え、表面温度(絶対温度)は 10000 K 弱、私たちの太陽系の太陽(真昼の快晴時)はやや黄味を帯びた白色に見え、6000 K 前後、べテルギウス(オリオン座)はかなり赤っぽく見え、3500 K 前後と言われています。

恒星は純粋の熱放射型光源とは言い切れず、また、介在する気体層での吸収等もあって単純ではないのですが、概ね熱放射型光源に準じていると考えられ、星の色による相関色温度から表面の絶対温度が推定できる訳です。各種恒星のスペクトル型(分光分布)毎に表面温度がおおよそ上表のように考えられています。

余談ながら、このスペクトル型の順序として、表面温度が高い方から順に、次のような覚え方が有名です。
Oh, Be A Fine Girl, Kiss Me ! または Oh, Beautiful And Fine Girl, Kiss Me !

照明光の色味
・・・・・ 色温度 と 相関色温度 ・・・・・

Q1.参考になりましたか?
Q2.次回連載を期待されますか?
Q3.連載の感想がありましたらご記入ください。

アンケートにご協力いただきありがとうございました。