光と色の話 第二部

光と色の話 第二部

第6回 照度計を使用する時の注意点

光の「明るさ」を測定・評価する時に、照度計や輝度計などの光測定器がよく使われます。これらの光測定器は測定対象光に受光部を向けて測定ボタンを押すだけで、表示窓に測定値が自動的に表示され、誰でも簡単に測定ができるため、様々なところで手軽によく使用されています。測定器としての測定精度は、その製品の使用説明書等に、例えば JIS (日本工業規格)で規定された等級が記載されており、測定器を選択する際の判断情報の一つとなっています。測定値もデジタル値で明確に表示されることもあって、殆どの場合、正確に測定できていると思って「安心して」使っているのが実態ではないでしょうか。

光測定器の測定誤差

一口に測定の正確さと言っても、その内容は様々な要因の組み合わせの結果であり、測定器の使用目的や測定条件に応じてその内容を正しく理解して使う必要があります。表示された測定値は一見正確なように思われがちですが、測定のやり方によっては必ずしもそうとは言い切れない場合があるにもかかわらず、一旦測定結果を得てしまうと、(大袈裟に言えば)その数値が絶対的なものとして独り歩きしてしまう、ということにもなりかねません。

光測定器の測定の正確さを左右する要因として大きく分けると、測定器の仕組み・構造などの所謂ハードウェアに起因するものと、測定者の使い方に起因するものに分けられます。

光測定器には、測光量(光束、照度、輝度など)を測定するもの、放射量(放射束、放射照度、放射輝度など)を測定するものなど様々な種類がありますが、ハードウェアに起因する誤差要因としては、目的とする測光量や放射量の定義に対して、どれだけ忠実な測定系(主として測定光学系)を具備しているかという点から、分光的誤差※1、受光角特性誤差、などがあり、更に光測定器だけではなく測定器一般に存在する検出処理回路の直線性・安定性、(温度、湿度の)使用環境的誤差、などが考えられます。

ハードウェアに起因する誤差は、その測定器(機種)を選択した時点で、誤差要因と誤差の程度が概ね決まってしまう、と言ってもいいかと思います。一方、使い方による誤差は、測定者の測定対象(試料光)に対する本質の理解とそれに関係する測定操作への配慮の有無が誤差を大きく左右すると言えます。

今回は測定者の使い方に起因して発生する誤差要因について、ハンディタイプの(フィルタ式)照度計に焦点を当ててみましょう。

受光部への斜入射光に対する注意

「照度」の定義は、「着目した平面の単位面積当たりに入射する光束」ということで、その面積に斜め方向から入射角 θ で入射した光束に対しては cos θ の重みづけで評価することが必要です※第一部第8回「照度の性質」。 従って、一般に照度計は受光部の受光角特性として、この斜入射光特性(コサイン特性)を具備しています。 つまり、照度計は受光部の正面方向から入射する光だけではなく、斜め方向から入射する光も同時に測定しており、斜め方向からの入射光に対してはその入射角 θ に対して cos θ の重みづけで測定評価しています。※2

今、例えば天井からの照明光が机上に与える照度を測る場合を考えてみます。光源は天井の一個だけとし、窓等からの光は無いと仮定します。この場合、机上に降り注ぐ光は、通常、天井の照明光源からの直接光が殆どですが、更に室内の壁面や什器備品等からの反射光も混じった結果として机上の照度が決まります。

この照度を測るために、照度計を机上にセットした状態で測定ボタンを押すという操作になりますが、その操作をするために測定者自身が照度計の受光部への斜入射光に対して外乱要素として機能してしまうことが懸念されます。つまり、測定者の手や顔や衣服等からの反射光が照度計の受光部へ混入してしまうこともあり、あるいはまた、壁面から机上へ向かう反射光を測定者が遮ってしまうということもあり、これらが測定誤差に繋がってしまうことになります。従って、測定者は、できるだけ姿勢をかがめて、自身からの反射光が受光部に入らないように、あるいは壁面等からの反射光を遮らないようにして測定するという配慮が必要になります。また、衣服も反射率の高い白っぽい衣服は避けて、反射率の低い黒系統の衣服が望ましいということになります。更に、このような外乱要素を排除してもっと正確に測定したい、という場合には、照度計の機種によってはリモート測定ケーブルという付属品を備えたものもありますので、これを利用すれば、より望ましい条件下で測定できます。

受光エリア内での照度分布に関する注意
(受光エリアよりも小さいスポット光は測定不可)

照度計を使用する場合の前提条件として、受光エリア内での照度分布は均一である、ということがあります。フィルタ式照度計の場合は特にその受光エリア内の位置によって感度が大きく異なっています。それは上節で述べた斜め入射光特性(コサイン特性)を実現する為に、図のように半球状の拡散透過部材を受光素子に被せた構成をとる場合が多く、入射位置によって受光素子に到達する経路に大きな差異が生じる為です。従って、受光エリア径よりも小さい細いビーム状の光束を受光部に入射させると、受光エリア内の入射位置によって表示値が大きく変化することが確認できます。

照度計を校正する時は、校正用基準光を均一な照度分布で受光エリア全域に入射させることによって校正し、その条件(均一照度分布)の下で性能が保証されています。

細いビーム光による照度を測定したい場合、入射光ビームの断面積と受光部面積の比から、測定値(表示値)を加工して照度値に“補正”換算するという手段がとられることがあるようですが、これは全く間違っており、「補正」ではなく「補悪」であるとしか言えません。

もし、(スポット光等による)受光エリア径よりも小さなエリアの照度を測定する必要がある場合は、輝度計と標準反射板を使用することをお勧めします。(具体的には次回「輝度計を使用する時の注意点」で触れる予定です。)

測定距離に対する注意(光源に接近し過ぎると誤差が大きくなる)

照度計を使用する時、通常は光源からの距離は 1 m 程度とかそれ以上の場合が多く、測定距離による誤差については殆ど問題になることはありません。しかし、場合によっては、光源からの距離が極めて近い状態(例えば 10 cm とか、それ以下)で測定が行われている場合があります。このような場合、距離が短くなればなるほど急激に測定誤差が大きくなってしまいます。

照度計校正の理論は、「照度に関する距離の逆 2 乗則」※第一部第8回「照度の性質」、すなわち、拡散性の点光源から放射状に放出される光束が照明する正対面積は距離の 2 乗に比例することになり、その結果照度(単位面積当たりの光束)は点光源からの距離の 2 乗に反比例する、という法則に基づいています。

照度計を校正する場合、暗室内に設置された測光ベンチという装置に校正用基準光源を所定の条件で点灯させると、(点灯が安定した後)規定された距離(通常 1.5 ~ 2 m 程度の場合が多い)において校正照度値が提供されるようになっていますので、この位置に照度計の受光部を正対させて測定・校正を行います※3。つまり、校正距離条件では、校正光源は「拡散性点光源」とみなすことができ、照度計受光部への入射光はほぼ平行光で垂直入射になっており、また照度計受光エリアの照度分布は均一になっています。

照度計の受光エリアは「点」ではなく、或る面積を持っています。光源上の或る点(面素)から照度計へ向かう光の内、受光エリア周辺部への入射光は、受光エリア中心への入射光に対して、光源距離が近いほど、また受光エリア径が大きいほど角度がついてくると同時に、光源からの相対距離比も大きくなってきます。つまり、光源距離が近いほど、受光エリア径が大きいほど、校正条件(平行光入射、均一照度)からの乖離が大きくなり、測定誤差を拡大する要因になってきます。実際には、拡散性光源の場合、受光エリア径の概ね 10 倍以上の距離をとれば、受光エリア径による測定誤差は殆ど無視できるようになってきます。(拡散性ではなく指向性の強い光源の場合は、拡散性光源と同程度の誤差に抑えるためには、もっと長い距離をとる必要が出てきます。)

一方、光源についても、実際の光源には当然大きさがあり、「点」ではありません。しかし、十分に距離を取れば、事実上殆ど「点」とみなしても問題ない(誤差が無視できる)ということが言えます。上述の受光エリア径の場合と同様に、(拡散光源の場合)光源径の概ね 10 倍以上の距離をとれば、距離の逆 2 乗則からの誤差は 1 % 以下となり、事実上ほぼ「点」光源とみなせるようになります。(拡散性ではなく指向性の強い光源の場合は、拡散性光源と同程度の誤差に抑えるためには、もっと長い距離をとる必要が出てきます。)

結局、光源からの距離に関して、照度計の測定性能が確保されるためには、理論的な「照度に関する距離の逆 2 乗則」からのズレがどの程度に納められるかによって決まると言えます。具体的には、光源から照度計受光部までの距離が、受光エリア径の大きさ及び光源の大きさに対して、相対的に十分大きい関係にあることが必要である、ということです。

実際の測定現場では、拡散性の白いカバーで覆われた蛍光灯だとか、窓一杯から射し込む太陽光だとか、光源の大きさ(面積)は様々であり、このような実際の照明環境下での照度を知りたい訳で、これらの大面積光源を点光源とみなせる距離で測定することはできません。

これらの光源面を細かく分割して考えると、それぞれの面素の集合体とみなすことができ、所定以上の距離をとれば、個々の面素はそれぞれを点光源とみなすことができます。個々の面素から照度計受光エリアに入射する光はほぼ平行光で、かつ受光エリア内の照度分布は均一と考えられ、光源面の多数の面素からの光が、この条件を満たしながら同時に受光エリアに入射していると考えられますから、これらの大面積光源が余程の近距離でない限りは大きな問題にはならないと考えてよいでしょう。

ただ、厳密な照度測定が必要な場合( LED の光度を求める場合など )には、後述の照度計側の距離基準位置の問題と併せて、光源( LED )側の距離基準位置の問題※4に十分な配慮が必要です。

照度計の距離基準位置(受光面位置)の問題

ところで、ここまで光源から照度計受光部までの「距離」についてお話してきましたが、この「距離」とは厳密にはどこからどこまでを指すのでしょうか?

光源側については、光源面の面素の位置で、点光源の場合には単純明快ですが、面光源の場合には面素の集合体としての“平均的位置”と考えられ、かなり曖昧であることは否めません。(一般的な照度測定の場合は、それでも大きな問題になることは殆どありませんが、上述のように近距離での厳密な測定の場合には光源側のこの曖昧さが誤差要因として効いてきます。)

照度計側についてはどうでしょうか。フィルタ型照度計の距離基準位置は、取扱説明書等では便宜上、受光部の半球状拡散面の中央部頂点が距離基準位置とされています。この頂点を含み受光部光軸に垂直な平面が「公称受光面位置」です。一般的な照明環境下で照度計を用いる場合は、(距離が十分であれば)この公称受光面位置を基準にして光源までの距離を考えて殆ど問題ありません。

フィルタ型照度計の場合、その受光部構造から分りますように、受光エリアへの入射光は、半球状拡散板の頂点部に入射するものから、もっと奥まった周辺部に入射するものまでありますので、公称受光面位置を距離の基準位置(半球状拡散板の頂点部)に設定するのは、全入射光を代表しているとは言えないことがわかります。つまり、真の受光面とは、受光エリアへの全入射光に対する総合的な実効平均受光位置であって、照度の基本特性である「距離の逆 2 乗則」を正確に再現する照度計基準位置、ということになります。実際の真の受光面位置は、半球拡散板の頂点に位置する公称受光面よりも少し奥の受光素子側にずれたところ(機種によって異なりますが、数 mm 程度)にあります※5

光源からの距離が十分ある(例えば 1 m などの)場合には、公称受光面位置と真の受光面位置の差異は殆ど無視できますので、実使用上は、公称受光面位置を距離の基準点としてもまず問題はありません。しかし、距離が短くなってくると、この差が相対的に誤差として効いてくることになりますので、厳密な測定が必要な場合には、この差を考慮して距離設定をする必要があります。

例えば、 LED の “ 光度 ” を測定するような場合です。 LED の光度 I [ cd = lm / sr ] は、所定距離 d [ m ] における照度
E [ lx = lm / m2 ] を測定し、「照度に関する距離の逆 2 乗則」を利用して、d 2Eの関係から算出します。
距離値 d は、求める光度 I に対して 2 乗で効いてきますので、 d の誤差を小さく抑えることは非常に重要です。

真の受光面位置は特に明示されておらず、一般の測定者には殆ど周知されていないのが実態ですが、公称受光面位置を示す場所(受光部の半球状拡散板の頂点)は、誰が見ても明確に場所が特定できます。距離を十分とった通常の照度測定においては真の受光面位置との差異は誤差要因として殆ど問題にならないため、実用上の利便性を優先して半球拡散面頂点部を公称受光面位置としている訳です。元々、ハンディタイプの照度計を用いた一般的な測定においては、このような受光面位置のズレを考慮しなければならないような、近距離での厳密な照度測定は、推奨されていないと言った方が良いのかもしれません。

注釈
※1 分光的誤差

例えば、照度測定や輝度測定の場合は、測定器の受光部の分光応答度特性は理論的には標準分光視感効率 V ( λ )の特性でなければなりませんが、現実の測定器(特にフィルタ型測定器)では、波長域によっては V ( λ ) に対して誤差を持ちますので、測定対象光の分光分布特性 P ( λ ) によっては誤差が大きくなることがあります。

※2 照度計の斜入射光特性(コサイン特性)の精度

照度計にも本格的なものから簡易的なものまで色々なものが市販されており、それぞれの製品によって、斜入射光特性の良否にはかなりの差があります。特に、入射角の大きい(水平方向に近い)入射光に対する特性には良否の差が大きく見られます。

※3 測光の国家標準と校正用基準光源

測光機器に限らず各種計量器は、どのメーカーのどの機種でも、所定の測定条件の下では、所定の誤差範囲内の測定値が得られるように、計量法という法律により国家標準が設けられて管理されています。実際には計量法校正事業者登録制度
( JCSS : Japan Calibration Service System ) によって管理されており、照度計の校正用基準光源は、この制度に基づいて特別に製作されたタングステン電球が用いられています。

この電球を測光ベンチの端に(電球のフィラメントの向きを含めて)予め定められた姿勢で設置して、所定の電圧・電流で点灯します。点灯後、発光出力が安定した状態で電球の発光位置(フィラメント)から所定の距離での照度値が値づけられています。(例えば 1.500 m の距離で 1000 lx )。未校正の照度計の受光部をその距離に正対設置して基準光を測定すると、一般には所定の照度値とは異なった測定値を表示しますので、照度計の測定値表示が校正値に一致するように照度計を校正します。

※4 パッケージに実装された LED の場合の光源側の距離基準位置

LED の光度を測定する場合、試料 LED が(パッケージに実装されていない)ベアチップ状態であれば、光源位置はチップ表面となり、距離設定に対する基準位置は明確ですが、パッケージに実装された LED の場合には、パッケージにはレンズや反射板の機能が含まれる場合も多く、光源としての実効的大きさ(面積、奥行き)が大きくなっている為、距離設定の基準位置は、 LED チップ表面からパッケージ頂点部までのどこになるのか、不明確です。従って、このような場合は(仮にパッケージ頂点部を距離基準位置に設定したとしても)光源位置の誤差要因が無視できるように、できるだけ距離を遠目に設定した条件で測定する配慮が必要です。

※5 真の受光面位置の求め方

JIS C 1609‐1:2006 『照度計 第1部:一般計量器』の附属書4 に『(参考)照度計受光部の受光基準面の求め方』として、真の受光面位置の具体的な求め方が記載されています。

照度計を使用する時の注意点

光と色の話 第二部

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第6回 照度計を使用する時の注意点

光の「明るさ」を測定・評価する時に、照度計や輝度計などの光測定器がよく使われます。これらの光測定器は測定対象光に受光部を向けて測定ボタンを押すだけで、表示窓に測定値が自動的に表示され、誰でも簡単に測定ができるため、様々なところで手軽によく使用されています。測定器としての測定精度は、その製品の使用説明書等に、例えば JIS (日本工業規格)で規定された等級が記載されており、測定器を選択する際の判断情報の一つとなっています。測定値もデジタル値で明確に表示されることもあって、殆どの場合、正確に測定できていると思って「安心して」使っているのが実態ではないでしょうか。

光測定器の測定誤差

一口に測定の正確さと言っても、その内容は様々な要因の組み合わせの結果であり、測定器の使用目的や測定条件に応じてその内容を正しく理解して使う必要があります。表示された測定値は一見正確なように思われがちですが、測定のやり方によっては必ずしもそうとは言い切れない場合があるにもかかわらず、一旦測定結果を得てしまうと、(大袈裟に言えば)その数値が絶対的なものとして独り歩きしてしまう、ということにもなりかねません。

光測定器の測定の正確さを左右する要因として大きく分けると、測定器の仕組み・構造などの所謂ハードウェアに起因するものと、測定者の使い方に起因するものに分けられます。

光測定器には、測光量(光束、照度、輝度など)を測定するもの、放射量(放射束、放射照度、放射輝度など)を測定するものなど様々な種類がありますが、ハードウェアに起因する誤差要因としては、目的とする測光量や放射量の定義に対して、どれだけ忠実な測定系(主として測定光学系)を具備しているかという点から、分光的誤差※1、受光角特性誤差、などがあり、更に光測定器だけではなく測定器一般に存在する検出処理回路の直線性・安定性、(温度、湿度の)使用環境的誤差、などが考えられます。

ハードウェアに起因する誤差は、その測定器(機種)を選択した時点で、誤差要因と誤差の程度が概ね決まってしまう、と言ってもいいかと思います。一方、使い方による誤差は、測定者の測定対象(試料光)に対する本質の理解とそれに関係する測定操作への配慮の有無が誤差を大きく左右すると言えます。

今回は測定者の使い方に起因して発生する誤差要因について、ハンディタイプの(フィルタ式)照度計に焦点を当ててみましょう。

受光部への斜入射光に対する注意

「照度」の定義は、「着目した平面の単位面積当たりに入射する光束」ということで、その面積に斜め方向から入射角 θ で入射した光束に対しては cos θ の重みづけで評価することが必要です※第一部第8回「照度の性質」。 従って、一般に照度計は受光部の受光角特性として、この斜入射光特性(コサイン特性)を具備しています。 つまり、照度計は受光部の正面方向から入射する光だけではなく、斜め方向から入射する光も同時に測定しており、斜め方向からの入射光に対してはその入射角 θ に対して cos θ の重みづけで測定評価しています。※2

今、例えば天井からの照明光が机上に与える照度を測る場合を考えてみます。光源は天井の一個だけとし、窓等からの光は無いと仮定します。この場合、机上に降り注ぐ光は、通常、天井の照明光源からの直接光が殆どですが、更に室内の壁面や什器備品等からの反射光も混じった結果として机上の照度が決まります。

この照度を測るために、照度計を机上にセットした状態で測定ボタンを押すという操作になりますが、その操作をするために測定者自身が照度計の受光部への斜入射光に対して外乱要素として機能してしまうことが懸念されます。つまり、測定者の手や顔や衣服等からの反射光が照度計の受光部へ混入してしまうこともあり、あるいはまた、壁面から机上へ向かう反射光を測定者が遮ってしまうということもあり、これらが測定誤差に繋がってしまうことになります。従って、測定者は、できるだけ姿勢をかがめて、自身からの反射光が受光部に入らないように、あるいは壁面等からの反射光を遮らないようにして測定するという配慮が必要になります。また、衣服も反射率の高い白っぽい衣服は避けて、反射率の低い黒系統の衣服が望ましいということになります。更に、このような外乱要素を排除してもっと正確に測定したい、という場合には、照度計の機種によってはリモート測定ケーブルという付属品を備えたものもありますので、これを利用すれば、より望ましい条件下で測定できます。

受光エリア内での照度分布に関する注意
(受光エリアよりも小さいスポット光は測定不可)

照度計を使用する場合の前提条件として、受光エリア内での照度分布は均一である、ということがあります。フィルタ式照度計の場合は特にその受光エリア内の位置によって感度が大きく異なっています。それは上節で述べた斜め入射光特性(コサイン特性)を実現する為に、図のように半球状の拡散透過部材を受光素子に被せた構成をとる場合が多く、入射位置によって受光素子に到達する経路に大きな差異が生じる為です。従って、受光エリア径よりも小さい細いビーム状の光束を受光部に入射させると、受光エリア内の入射位置によって表示値が大きく変化することが確認できます。

照度計を校正する時は、校正用基準光を均一な照度分布で受光エリア全域に入射させることによって校正し、その条件(均一照度分布)の下で性能が保証されています。

細いビーム光による照度を測定したい場合、入射光ビームの断面積と受光部面積の比から、測定値(表示値)を加工して照度値に“補正”換算するという手段がとられることがあるようですが、これは全く間違っており、「補正」ではなく「補悪」であるとしか言えません。

もし、(スポット光等による)受光エリア径よりも小さなエリアの照度を測定する必要がある場合は、輝度計と標準反射板を使用することをお勧めします。(具体的には次回「輝度計を使用する時の注意点」で触れる予定です。)

測定距離に対する注意(光源に接近し過ぎると誤差が大きくなる)

照度計を使用する時、通常は光源からの距離は 1 m 程度とかそれ以上の場合が多く、測定距離による誤差については殆ど問題になることはありません。しかし、場合によっては、光源からの距離が極めて近い状態(例えば 10 cm とか、それ以下)で測定が行われている場合があります。このような場合、距離が短くなればなるほど急激に測定誤差が大きくなってしまいます。

照度計校正の理論は、「照度に関する距離の逆 2 乗則」※第一部第8回「照度の性質」、すなわち、拡散性の点光源から放射状に放出される光束が照明する正対面積は距離の 2 乗に比例することになり、その結果照度(単位面積当たりの光束)は点光源からの距離の 2 乗に反比例する、という法則に基づいています。

照度計を校正する場合、暗室内に設置された測光ベンチという装置に校正用基準光源を所定の条件で点灯させると、(点灯が安定した後)規定された距離(通常 1.5 ~ 2 m 程度の場合が多い)において校正照度値が提供されるようになっていますので、この位置に照度計の受光部を正対させて測定・校正を行います※3。つまり、校正距離条件では、校正光源は「拡散性点光源」とみなすことができ、照度計受光部への入射光はほぼ平行光で垂直入射になっており、また照度計受光エリアの照度分布は均一になっています。

照度計の受光エリアは「点」ではなく、或る面積を持っています。光源上の或る点(面素)から照度計へ向かう光の内、受光エリア周辺部への入射光は、受光エリア中心への入射光に対して、光源距離が近いほど、また受光エリア径が大きいほど角度がついてくると同時に、光源からの相対距離比も大きくなってきます。つまり、光源距離が近いほど、受光エリア径が大きいほど、校正条件(平行光入射、均一照度)からの乖離が大きくなり、測定誤差を拡大する要因になってきます。実際には、拡散性光源の場合、受光エリア径の概ね 10 倍以上の距離をとれば、受光エリア径による測定誤差は殆ど無視できるようになってきます。(拡散性ではなく指向性の強い光源の場合は、拡散性光源と同程度の誤差に抑えるためには、もっと長い距離をとる必要が出てきます。)

一方、光源についても、実際の光源には当然大きさがあり、「点」ではありません。しかし、十分に距離を取れば、事実上殆ど「点」とみなしても問題ない(誤差が無視できる)ということが言えます。上述の受光エリア径の場合と同様に、(拡散光源の場合)光源径の概ね 10 倍以上の距離をとれば、距離の逆 2 乗則からの誤差は 1 % 以下となり、事実上ほぼ「点」光源とみなせるようになります。(拡散性ではなく指向性の強い光源の場合は、拡散性光源と同程度の誤差に抑えるためには、もっと長い距離をとる必要が出てきます。)

結局、光源からの距離に関して、照度計の測定性能が確保されるためには、理論的な「照度に関する距離の逆 2 乗則」からのズレがどの程度に納められるかによって決まると言えます。具体的には、光源から照度計受光部までの距離が、受光エリア径の大きさ及び光源の大きさに対して、相対的に十分大きい関係にあることが必要である、ということです。

実際の測定現場では、拡散性の白いカバーで覆われた蛍光灯だとか、窓一杯から射し込む太陽光だとか、光源の大きさ(面積)は様々であり、このような実際の照明環境下での照度を知りたい訳で、これらの大面積光源を点光源とみなせる距離で測定することはできません。

これらの光源面を細かく分割して考えると、それぞれの面素の集合体とみなすことができ、所定以上の距離をとれば、個々の面素はそれぞれを点光源とみなすことができます。個々の面素から照度計受光エリアに入射する光はほぼ平行光で、かつ受光エリア内の照度分布は均一と考えられ、光源面の多数の面素からの光が、この条件を満たしながら同時に受光エリアに入射していると考えられますから、これらの大面積光源が余程の近距離でない限りは大きな問題にはならないと考えてよいでしょう。

ただ、厳密な照度測定が必要な場合( LED の光度を求める場合など )には、後述の照度計側の距離基準位置の問題と併せて、光源( LED )側の距離基準位置の問題※4に十分な配慮が必要です。

照度計の距離基準位置(受光面位置)の問題

ところで、ここまで光源から照度計受光部までの「距離」についてお話してきましたが、この「距離」とは厳密にはどこからどこまでを指すのでしょうか?

光源側については、光源面の面素の位置で、点光源の場合には単純明快ですが、面光源の場合には面素の集合体としての“平均的位置”と考えられ、かなり曖昧であることは否めません。(一般的な照度測定の場合は、それでも大きな問題になることは殆どありませんが、上述のように近距離での厳密な測定の場合には光源側のこの曖昧さが誤差要因として効いてきます。)

照度計側についてはどうでしょうか。フィルタ型照度計の距離基準位置は、取扱説明書等では便宜上、受光部の半球状拡散面の中央部頂点が距離基準位置とされています。この頂点を含み受光部光軸に垂直な平面が「公称受光面位置」です。一般的な照明環境下で照度計を用いる場合は、(距離が十分であれば)この公称受光面位置を基準にして光源までの距離を考えて殆ど問題ありません。

フィルタ型照度計の場合、その受光部構造から分りますように、受光エリアへの入射光は、半球状拡散板の頂点部に入射するものから、もっと奥まった周辺部に入射するものまでありますので、公称受光面位置を距離の基準位置(半球状拡散板の頂点部)に設定するのは、全入射光を代表しているとは言えないことがわかります。つまり、真の受光面とは、受光エリアへの全入射光に対する総合的な実効平均受光位置であって、照度の基本特性である「距離の逆 2 乗則」を正確に再現する照度計基準位置、ということになります。実際の真の受光面位置は、半球拡散板の頂点に位置する公称受光面よりも少し奥の受光素子側にずれたところ(機種によって異なりますが、数 mm 程度)にあります※5

光源からの距離が十分ある(例えば 1 m などの)場合には、公称受光面位置と真の受光面位置の差異は殆ど無視できますので、実使用上は、公称受光面位置を距離の基準点としてもまず問題はありません。しかし、距離が短くなってくると、この差が相対的に誤差として効いてくることになりますので、厳密な測定が必要な場合には、この差を考慮して距離設定をする必要があります。

例えば、 LED の “ 光度 ” を測定するような場合です。 LED の光度 I [ cd = lm / sr ] は、所定距離 d [ m ] における照度
E [ lx = lm / m2 ] を測定し、「照度に関する距離の逆 2 乗則」を利用して、d 2Eの関係から算出します。
距離値 d は、求める光度 I に対して 2 乗で効いてきますので、 d の誤差を小さく抑えることは非常に重要です。

真の受光面位置は特に明示されておらず、一般の測定者には殆ど周知されていないのが実態ですが、公称受光面位置を示す場所(受光部の半球状拡散板の頂点)は、誰が見ても明確に場所が特定できます。距離を十分とった通常の照度測定においては真の受光面位置との差異は誤差要因として殆ど問題にならないため、実用上の利便性を優先して半球拡散面頂点部を公称受光面位置としている訳です。元々、ハンディタイプの照度計を用いた一般的な測定においては、このような受光面位置のズレを考慮しなければならないような、近距離での厳密な照度測定は、推奨されていないと言った方が良いのかもしれません。

注釈
※1 分光的誤差

例えば、照度測定や輝度測定の場合は、測定器の受光部の分光応答度特性は理論的には標準分光視感効率 V ( λ )の特性でなければなりませんが、現実の測定器(特にフィルタ型測定器)では、波長域によっては V ( λ ) に対して誤差を持ちますので、測定対象光の分光分布特性 P ( λ ) によっては誤差が大きくなることがあります。

※2 照度計の斜入射光特性(コサイン特性)の精度

照度計にも本格的なものから簡易的なものまで色々なものが市販されており、それぞれの製品によって、斜入射光特性の良否にはかなりの差があります。特に、入射角の大きい(水平方向に近い)入射光に対する特性には良否の差が大きく見られます。

※3 測光の国家標準と校正用基準光源

測光機器に限らず各種計量器は、どのメーカーのどの機種でも、所定の測定条件の下では、所定の誤差範囲内の測定値が得られるように、計量法という法律により国家標準が設けられて管理されています。実際には計量法校正事業者登録制度
( JCSS : Japan Calibration Service System ) によって管理されており、照度計の校正用基準光源は、この制度に基づいて特別に製作されたタングステン電球が用いられています。

この電球を測光ベンチの端に(電球のフィラメントの向きを含めて)予め定められた姿勢で設置して、所定の電圧・電流で点灯します。点灯後、発光出力が安定した状態で電球の発光位置(フィラメント)から所定の距離での照度値が値づけられています。(例えば 1.500 m の距離で 1000 lx )。未校正の照度計の受光部をその距離に正対設置して基準光を測定すると、一般には所定の照度値とは異なった測定値を表示しますので、照度計の測定値表示が校正値に一致するように照度計を校正します。

※4 パッケージに実装された LED の場合の光源側の距離基準位置

LED の光度を測定する場合、試料 LED が(パッケージに実装されていない)ベアチップ状態であれば、光源位置はチップ表面となり、距離設定に対する基準位置は明確ですが、パッケージに実装された LED の場合には、パッケージにはレンズや反射板の機能が含まれる場合も多く、光源としての実効的大きさ(面積、奥行き)が大きくなっている為、距離設定の基準位置は、 LED チップ表面からパッケージ頂点部までのどこになるのか、不明確です。従って、このような場合は(仮にパッケージ頂点部を距離基準位置に設定したとしても)光源位置の誤差要因が無視できるように、できるだけ距離を遠目に設定した条件で測定する配慮が必要です。

※5 真の受光面位置の求め方

JIS C 1609‐1:2006 『照度計 第1部:一般計量器』の附属書4 に『(参考)照度計受光部の受光基準面の求め方』として、真の受光面位置の具体的な求め方が記載されています。

照度計を使用する時の注意点

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