光と色の話 第二部

光と色の話 第二部

第7回 輝度計を使用する時の注意点

今回は、輝度計についての測定操作に起因する誤差要因について述べてみたいと思います。輝度計についても、照度計と同様に、その測定誤差はハードウェアに起因するものと、測定者の使い方に起因するものがあります。

輝度の定義は、 “ 見かけの単位面積 [ m2 ] 当たりの光度 [ cd ] ” で、単位は [ cd / m2 ] でした。光度の定義は “ 単位立体角
[ sr ] 当たりに放出される光束 [ lm ] ” でしたから、結局、輝度の単位は [ lm / ( m2 ・ sr ) ] という意味を持っています。
※第一部第7回

ピント合わせをキッチリと!!

輝度計のファインダーは、測定部位の周囲も視野に捉えることによって、目的の測定部位を確認して、そこに照準(ピント)を合わせ込むようになっています。輝度計を使用する時は、ファインダーから覗いてファインダー中央部にある円形指標(測定円)を測定部位に合わせてピントを合わせてから測定ボタンを押して測定します ※1 。つまり、ファインダーの測定円で囲まれた測定部位から発せられ、かつ観察方向へ進行する光束のみを捉えて測定しています。このことにより「(観測方向からの)見かけの単位面積当たり」という定義に沿った測定が可能になる訳です。もし測定部位にピントが合っていなければ、測定部位の外からの光束も混入してしまい、測定誤差になってしまいます ※2 。これは写真撮影時にピントが合っていなければ、撮れた写真がボケボケになってしまうことと同様のことです。

輝度計のピント調節はレンズの距離リングを回して行いますが、測定部位までの距離が近いと、距離リングを最近接端まで回してもピントを合わせきれない場合があります。このような場合は、正しい輝度測定ができないのですが、輝度計の機種によってはクローズアップレンズが付属品として用意されているものもありますので、クローズアップレンズを付加すれば、(クローズアップレンズの仕様範囲内で)更に近距離までピントを合わすことが可能です。

測定部位近辺の輝度分布が不均一な場合の注意点

輝度計は狭い受光角で測定しますので試料面の測定部位の面積はかなり小さく、一般的には、測定部位近辺の輝度分布の変化の影響を比較的受けにくいと言えますが、測定部位およびその近辺の輝度分布の不均一性が大きい場合には測定誤差に繋がる場合がありますので以下の ① ~ ③ のような注意が必要です。

① 輝度計の保持はしっかりと!!(手振れに注意)

上述のように、輝度測定は、測定部位を厳密に規定することが正しい測定の前提条件になります。実際の測定操作において、特にハンディタイプの輝度計においては、輝度計のグリップ部を片手で保持して測ることが多く、(キッチリとピントを合わせても)測定ボタンを押す操作によって輝度計が手振れを起こしてしまうことがあります。その結果、輝度計の測定エリアが被測定面を「走査」することになってしまい、手振れ写真と同様なことが起こってしまいます。

被測定部位の周辺部の輝度分布がほぼ均一であれば、手振れが起こっても測定誤差は殆ど無視することもできますが、周辺部の輝度分布が大きく変化している場合は大きな測定誤差に繋がってしまいます。従って、輝度計にもう一方の手を添えて肘を固めてしっかりと保持した状態で測定ボタンを押すような配慮が必要です。

特に、測定距離が長い場合は、手振れによって輝度計が被測定面上を「走査」してしまう距離
(測定位置誤差 Δ xd × Δ θ )が長くなりますので、測定部位近辺の不均一な輝度分布による測定誤差が大きくなりがちです。

輝度計を三脚やカメラ台に固定して測定するようにすれば、手振れの心配は無くなります。※3

② 測定エリア内での試料面輝度分布が不均一な場合、測定結果は面積加重平均になる

(レンズ結像式)輝度計の受光角は、ファインダー内測定エリア指標の例えば測定角 1° の測定円で示されるように、通常は非常に狭い面積を測定しますので、測定面積内の輝度分布は概ね均一である場合が多いのですが、場合によっては測定面積内での輝度分布に凹凸がある場合もあります。この場合の測定値は、輝度分布の面積加重平均値になりますので、測定値の意味・・・測定面積をもっと細かく分割すれば、測定値よりも高い輝度部分もあれば低い輝度部分も存在すること・・・を正しく理解しておく必要があります。

従って、測定円内での試料面輝度分布の不均一さが懸念され、その詳細まで確認したい場合は、ピントの合う範囲で測定距離を短くして(すなわち、測定レンズの距離リングの最近接端で)測定面積を最小化し、測定点の数を増やして輝度分布を測定するとよいでしょう。 また、クローズアップレンズを付加すれば、更により小さい面積を測定できます。

③ 測定部位近辺に高輝度部が存在する場合

輝度計の受光光学系は、ファインダー内に示された測定円内からの光束のみを抽出測定するようになっています ※1 。つまり、輝度計センサーの受光角度に対する感度分布は、理論的には下図左のように、測定円内では均一な所定感度、測定円外ではゼロであるべきです。ところが実際には(極力理論通りになるように設計されてはいますが)完全なステップ関数になっている訳ではなく、下図右の様に、測定円境界の外側直近部では受光感度がわずかながら尾を引いています。

一般的な緩やかな輝度分布面であれば、この問題は殆ど無視できるのですが、高輝度エリアに境を接する低輝度エリアの境界近辺の測定を行う場合は、尾を引いた受光感度部分が測定誤差を引き起こしてしまいます。

測定円(例えば 1° )の境界を挟んで隣接した、円内のA部と円外ののB部について、A 部の受光感度に対する B 部の相対受光感度が0.1 % であったと仮定します。 A 部と B 部の輝度が同程度の場合には、 B 部の影響は殆ど無視できます。しかし、 A 部の輝度に対して B 部の輝度が仮に 1000 倍であったらどうでしょう。
B 部の輝度評価が A 部の輝度評価と同等の重みで測定値に混入されてしまいます。

つまり、高輝度エリアに境を接する低輝度エリアの境界近辺を測定する場合は、高輝度エリアからのノイズ光を受け易いということに注意する必要があります。このような場合、低輝度エリアの輝度分布が概ね一様であると考えられる場合は、高低の輝度境界から少し離れた位置で測定する方が無難であると言えます。

輝度は測定距離に無関係か?(念の為、測定距離データを残しておく)

第一部第9回「輝度の性質」でお話ししましたように、輝度は測定距離には依存しない、とされることが多いのですが、そのためには前提条件があることがつい忘れられることが多い様です。その前提条件は 第一部第9回の注釈 ※6 をご参照下さい。理想通りであれば輝度測定に測定距離は関係が無いのですが、実際の測定条件は様々ですので、いつもこの前提条件が満たされているとは限らず、測定輝度値が距離によって幾分変動してしまうこともあります。実際、何か問題が発生して、後日再測定するということも起こり得ますので、その場合の測定再現性を確保するために、念の為測定距離データを残しておくことをお勧めします。

輝度計の照度測定への適用

ここでは、輝度計使用時の注意事項という訳ではありませんが、前回(第6回)「照度計を使用する時の注意点」の照度測定誤差との関係で、輝度計を利用して照度測定誤差を回避する手段について述べます。

第一部第10回「反射面における照度と輝度の関係」で説明しましたように、或る反射面への入射光束による照度と反射光束による輝度との間には比例関係があります。従ってこの関係を利用すれば、輝度計によって照度を測ることも可能になります。ただし、そのためには条件があり、反射面の拡散反射配光特性および反射率特性のデータが予め分かっていることです。しかし、これらの特性は不明な場合が殆どで、かつ一般に反射面の種類(材質や表面状態等)毎に、また、入射角、反射角毎に異なっていますので、簡単に適用するのは困難です。

このような問題に対して、「標準白色反射板」と呼ばれる光学製品を使用することにより、この問題を克服することが可能です。「標準白色反射板」とは、その反射面が(理論的な完全拡散反射面に準じた良好な)均等拡散反射特性を持ち、反射率も高い( 90 数 % )反射板です。この反射面への入射光束による照度を E [ lx ] 、反射光束による輝度を L [ cd / m2 ] とすると

という関係が成り立ちます (第一部第10回の注釈 ※3 参照) 。 ρ は反射面の反射率(正確には輝度率・・・ 第一部第12回の注釈 ※1 参照)で、その標準白色反射板固有の特性データが値付けられて販売されています。

理論的に、均等拡散反射面では照明方向(入射角)にも観察方向(反射角)にも関係なくこの関係式が成り立ちますので、任意の方向から、輝度 L を測定することにより、計算によって照度 E を求めることができます。

前回(第6回)において、照度計の受光エリアよりも小さい面積の照度を測定したい場合、照度計では受光エリア内での位置による受光感度分布が不均一なために正しい測定が困難であることをお話しました。このような場合、輝度計と標準反射板を使用することで、照度計の受光エリアよりも小さい面積の照度を求めることができます。輝度計は非常に狭い受光角で反射面の小さな面積の輝度を測定できますので、照度を測定したい場所に標準白色反射板を置き、その反射面の小さなエリアを輝度計で測定し、上の関係式を用いて計算することにより照度を求める訳です。

均等拡散反射板においては、その面の輝度を測る場合、理論的にはどの反射角方向から測定しても同じ輝度値が得られるはずなのですが、現実の標準白色反射板は理想の均等拡散反射とは言い切れず、入射光に対する正反射方向は、その近辺の反射方向に比べると、反射配光特性が僅かに高めになっていますので、正反射方向を避けて輝度測定した方が良いでしょう。

注釈
※1 輝度計の基本構成例(レンズ式フィルタ型の場合)

(レンズ式フィルタ型)輝度計は、被測定面の像を対物レンズによって結像面に結像させ、像面絞りによって、被測定エリアからの光束のみをくり貫いてセンサーユニット(視感度補正フィルタ + 光電検出器)で受光する仕組みになっています。
ピントが調整された状態では、像面照度 E は被測定面輝度 L に比例します( Eτ Ω L )ので、像面照度 E を測って輝度 を算出する訳です。ただし、Ω は像面絞りへ入射する光束の開き角(立体角)、 τ は(レンズを含む、被測定面からセンサーユニットまでの)媒質の透過率です。ただ単にレンズで結像させるだけでは像面照度 は、立体角 Ω や透過率 τ によっても変化してしまいます。ピント調整によって対物レンズを前後に移動させると、センサーユニットへ入射する光束の立体角 Ω は変化してしまいますので、これを変化しないようにするために対物レンズの直後に固定絞りを設けて像面絞りとの組み合わせにより、強制的に立体角 Ω を定数化しています。また透過率 τ については、特殊な条件(霧の中の街灯、水族館の水中照明など)の場合には変化してしまいますが、通常の測定条件下では、一定とみなせることが殆どです。結局、通常条件下では像面照度 E と輝度 が単純比例の関係となります。

※2 レンズ式輝度計のピント調整と測定誤差

測定距離 d1 において、ピント調整された状態では、測定対象エリアがセンサーユニット前面に設けられた像面絞り(固定ホール)位置に結像しています。つまり、輝度計のセンサーユニット側から見ると、像面絞りと固定絞りを介して、被測定面の測定エリアだけが(ピントがピッタリと合った状態で)見えています。

輝度計の距離調整がこの状態のまま、例えば被測定面がもっと遠い測定距離( d2 )になってピントがずれた場合、輝度計のセンサーユニット側から見た被測定面のエリアは、ピントが合っていた距離 d1 の場合に比べてもっと大きな範囲になり、測定部位の外からの光束も測定に混入することになってしまいます。

※3

輝度計の機種によっては、グリップ部の下側に三脚用のネジ穴が設けてあるものもあります。

輝度計を使用する時の注意点

光と色の話 第二部

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第7回 輝度計を使用する時の注意点

今回は、輝度計についての測定操作に起因する誤差要因について述べてみたいと思います。輝度計についても、照度計と同様に、その測定誤差はハードウェアに起因するものと、測定者の使い方に起因するものがあります。

輝度の定義は、 “ 見かけの単位面積 [ m2 ] 当たりの光度 [ cd ] ” で、単位は [ cd / m2 ] でした。光度の定義は “ 単位立体角
[ sr ] 当たりに放出される光束 [ lm ] ” でしたから、結局、輝度の単位は [ lm / ( m2 ・ sr ) ] という意味を持っています。
※第一部第7回

ピント合わせをキッチリと!!

輝度計のファインダーは、測定部位の周囲も視野に捉えることによって、目的の測定部位を確認して、そこに照準(ピント)を合わせ込むようになっています。輝度計を使用する時は、ファインダーから覗いてファインダー中央部にある円形指標(測定円)を測定部位に合わせてピントを合わせてから測定ボタンを押して測定します ※1 。つまり、ファインダーの測定円で囲まれた測定部位から発せられ、かつ観察方向へ進行する光束のみを捉えて測定しています。このことにより「(観測方向からの)見かけの単位面積当たり」という定義に沿った測定が可能になる訳です。もし測定部位にピントが合っていなければ、測定部位の外からの光束も混入してしまい、測定誤差になってしまいます ※2 。これは写真撮影時にピントが合っていなければ、撮れた写真がボケボケになってしまうことと同様のことです。

輝度計のピント調節はレンズの距離リングを回して行いますが、測定部位までの距離が近いと、距離リングを最近接端まで回してもピントを合わせきれない場合があります。このような場合は、正しい輝度測定ができないのですが、輝度計の機種によってはクローズアップレンズが付属品として用意されているものもありますので、クローズアップレンズを付加すれば、(クローズアップレンズの仕様範囲内で)更に近距離までピントを合わすことが可能です。

測定部位近辺の輝度分布が不均一な場合の注意点

輝度計は狭い受光角で測定しますので試料面の測定部位の面積はかなり小さく、一般的には、測定部位近辺の輝度分布の変化の影響を比較的受けにくいと言えますが、測定部位およびその近辺の輝度分布の不均一性が大きい場合には測定誤差に繋がる場合がありますので以下の ① ~ ③ のような注意が必要です。

① 輝度計の保持はしっかりと!!(手振れに注意)

上述のように、輝度測定は、測定部位を厳密に規定することが正しい測定の前提条件になります。実際の測定操作において、特にハンディタイプの輝度計においては、輝度計のグリップ部を片手で保持して測ることが多く、(キッチリとピントを合わせても)測定ボタンを押す操作によって輝度計が手振れを起こしてしまうことがあります。その結果、輝度計の測定エリアが被測定面を「走査」することになってしまい、手振れ写真と同様なことが起こってしまいます。

被測定部位の周辺部の輝度分布がほぼ均一であれば、手振れが起こっても測定誤差は殆ど無視することもできますが、周辺部の輝度分布が大きく変化している場合は大きな測定誤差に繋がってしまいます。従って、輝度計にもう一方の手を添えて肘を固めてしっかりと保持した状態で測定ボタンを押すような配慮が必要です。

特に、測定距離が長い場合は、手振れによって輝度計が被測定面上を「走査」してしまう距離
(測定位置誤差 Δ xd × Δ θ )が長くなりますので、測定部位近辺の不均一な輝度分布による測定誤差が大きくなりがちです。

輝度計を三脚やカメラ台に固定して測定するようにすれば、手振れの心配は無くなります。※3

② 測定エリア内での試料面輝度分布が不均一な場合、測定結果は面積加重平均になる

(レンズ結像式)輝度計の受光角は、ファインダー内測定エリア指標の例えば測定角 1° の測定円で示されるように、通常は非常に狭い面積を測定しますので、測定面積内の輝度分布は概ね均一である場合が多いのですが、場合によっては測定面積内での輝度分布に凹凸がある場合もあります。この場合の測定値は、輝度分布の面積加重平均値になりますので、測定値の意味・・・測定面積をもっと細かく分割すれば、測定値よりも高い輝度部分もあれば低い輝度部分も存在すること・・・を正しく理解しておく必要があります。

従って、測定円内での試料面輝度分布の不均一さが懸念され、その詳細まで確認したい場合は、ピントの合う範囲で測定距離を短くして(すなわち、測定レンズの距離リングの最近接端で)測定面積を最小化し、測定点の数を増やして輝度分布を測定するとよいでしょう。 また、クローズアップレンズを付加すれば、更により小さい面積を測定できます。

③ 測定部位近辺に高輝度部が存在する場合

輝度計の受光光学系は、ファインダー内に示された測定円内からの光束のみを抽出測定するようになっています ※1 。つまり、輝度計センサーの受光角度に対する感度分布は、理論的には下図左のように、測定円内では均一な所定感度、測定円外ではゼロであるべきです。ところが実際には(極力理論通りになるように設計されてはいますが)完全なステップ関数になっている訳ではなく、下図右の様に、測定円境界の外側直近部では受光感度がわずかながら尾を引いています。

一般的な緩やかな輝度分布面であれば、この問題は殆ど無視できるのですが、高輝度エリアに境を接する低輝度エリアの境界近辺の測定を行う場合は、尾を引いた受光感度部分が測定誤差を引き起こしてしまいます。

測定円(例えば 1° )の境界を挟んで隣接した、円内のA部と円外ののB部について、A 部の受光感度に対する B 部の相対受光感度が0.1 % であったと仮定します。 A 部と B 部の輝度が同程度の場合には、 B 部の影響は殆ど無視できます。しかし、 A 部の輝度に対して B 部の輝度が仮に 1000 倍であったらどうでしょう。
B 部の輝度評価が A 部の輝度評価と同等の重みで測定値に混入されてしまいます。

つまり、高輝度エリアに境を接する低輝度エリアの境界近辺を測定する場合は、高輝度エリアからのノイズ光を受け易いということに注意する必要があります。このような場合、低輝度エリアの輝度分布が概ね一様であると考えられる場合は、高低の輝度境界から少し離れた位置で測定する方が無難であると言えます。

輝度は測定距離に無関係か?(念の為、測定距離データを残しておく)

第一部第9回「輝度の性質」でお話ししましたように、輝度は測定距離には依存しない、とされることが多いのですが、そのためには前提条件があることがつい忘れられることが多い様です。その前提条件は 第一部第9回の注釈 ※6 をご参照下さい。理想通りであれば輝度測定に測定距離は関係が無いのですが、実際の測定条件は様々ですので、いつもこの前提条件が満たされているとは限らず、測定輝度値が距離によって幾分変動してしまうこともあります。実際、何か問題が発生して、後日再測定するということも起こり得ますので、その場合の測定再現性を確保するために、念の為測定距離データを残しておくことをお勧めします。

輝度計の照度測定への適用

ここでは、輝度計使用時の注意事項という訳ではありませんが、前回(第6回)「照度計を使用する時の注意点」の照度測定誤差との関係で、輝度計を利用して照度測定誤差を回避する手段について述べます。

第一部第10回「反射面における照度と輝度の関係」で説明しましたように、或る反射面への入射光束による照度と反射光束による輝度との間には比例関係があります。従ってこの関係を利用すれば、輝度計によって照度を測ることも可能になります。ただし、そのためには条件があり、反射面の拡散反射配光特性および反射率特性のデータが予め分かっていることです。しかし、これらの特性は不明な場合が殆どで、かつ一般に反射面の種類(材質や表面状態等)毎に、また、入射角、反射角毎に異なっていますので、簡単に適用するのは困難です。

このような問題に対して、「標準白色反射板」と呼ばれる光学製品を使用することにより、この問題を克服することが可能です。「標準白色反射板」とは、その反射面が(理論的な完全拡散反射面に準じた良好な)均等拡散反射特性を持ち、反射率も高い( 90 数 % )反射板です。この反射面への入射光束による照度を E [ lx ] 、反射光束による輝度を L [ cd / m2 ] とすると

という関係が成り立ちます (第一部第10回の注釈 ※3 参照) 。 ρ は反射面の反射率(正確には輝度率・・・ 第一部第12回の注釈 ※1 参照)で、その標準白色反射板固有の特性データが値付けられて販売されています。

理論的に、均等拡散反射面では照明方向(入射角)にも観察方向(反射角)にも関係なくこの関係式が成り立ちますので、任意の方向から、輝度 L を測定することにより、計算によって照度 E を求めることができます。

前回(第6回)において、照度計の受光エリアよりも小さい面積の照度を測定したい場合、照度計では受光エリア内での位置による受光感度分布が不均一なために正しい測定が困難であることをお話しました。このような場合、輝度計と標準反射板を使用することで、照度計の受光エリアよりも小さい面積の照度を求めることができます。輝度計は非常に狭い受光角で反射面の小さな面積の輝度を測定できますので、照度を測定したい場所に標準白色反射板を置き、その反射面の小さなエリアを輝度計で測定し、上の関係式を用いて計算することにより照度を求める訳です。

均等拡散反射板においては、その面の輝度を測る場合、理論的にはどの反射角方向から測定しても同じ輝度値が得られるはずなのですが、現実の標準白色反射板は理想の均等拡散反射とは言い切れず、入射光に対する正反射方向は、その近辺の反射方向に比べると、反射配光特性が僅かに高めになっていますので、正反射方向を避けて輝度測定した方が良いでしょう。

注釈
※1 輝度計の基本構成例(レンズ式フィルタ型の場合)

(レンズ式フィルタ型)輝度計は、被測定面の像を対物レンズによって結像面に結像させ、像面絞りによって、被測定エリアからの光束のみをくり貫いてセンサーユニット(視感度補正フィルタ + 光電検出器)で受光する仕組みになっています。
ピントが調整された状態では、像面照度 E は被測定面輝度 L に比例します( Eτ Ω L )ので、像面照度 E を測って輝度 を算出する訳です。ただし、Ω は像面絞りへ入射する光束の開き角(立体角)、 τ は(レンズを含む、被測定面からセンサーユニットまでの)媒質の透過率です。ただ単にレンズで結像させるだけでは像面照度 は、立体角 Ω や透過率 τ によっても変化してしまいます。ピント調整によって対物レンズを前後に移動させると、センサーユニットへ入射する光束の立体角 Ω は変化してしまいますので、これを変化しないようにするために対物レンズの直後に固定絞りを設けて像面絞りとの組み合わせにより、強制的に立体角 Ω を定数化しています。また透過率 τ については、特殊な条件(霧の中の街灯、水族館の水中照明など)の場合には変化してしまいますが、通常の測定条件下では、一定とみなせることが殆どです。結局、通常条件下では像面照度 E と輝度 が単純比例の関係となります。

※2 レンズ式輝度計のピント調整と測定誤差

測定距離 d1 において、ピント調整された状態では、測定対象エリアがセンサーユニット前面に設けられた像面絞り(固定ホール)位置に結像しています。つまり、輝度計のセンサーユニット側から見ると、像面絞りと固定絞りを介して、被測定面の測定エリアだけが(ピントがピッタリと合った状態で)見えています。

輝度計の距離調整がこの状態のまま、例えば被測定面がもっと遠い測定距離( d2 )になってピントがずれた場合、輝度計のセンサーユニット側から見た被測定面のエリアは、ピントが合っていた距離 d1 の場合に比べてもっと大きな範囲になり、測定部位の外からの光束も測定に混入することになってしまいます。

※3

輝度計の機種によっては、グリップ部の下側に三脚用のネジ穴が設けてあるものもあります。

輝度計を使用する時の注意点

光と色の話 第二部

光と色の話 第二部

第7回 輝度計を使用する時の注意点

今回は、輝度計についての測定操作に起因する誤差要因について述べてみたいと思います。輝度計についても、照度計と同様に、その測定誤差はハードウェアに起因するものと、測定者の使い方に起因するものがあります。

輝度の定義は、 “ 見かけの単位面積 [ m2 ] 当たりの光度 [ cd ] ” で、単位は [ cd / m2 ] でした。光度の定義は “ 単位立体角
[ sr ] 当たりに放出される光束 [ lm ] ” でしたから、結局、輝度の単位は [ lm / ( m2 ・ sr ) ] という意味を持っています。
※第一部第7回

ピント合わせをキッチリと!!

輝度計のファインダーは、測定部位の周囲も視野に捉えることによって、目的の測定部位を確認して、そこに照準(ピント)を合わせ込むようになっています。輝度計を使用する時は、ファインダーから覗いてファインダー中央部にある円形指標(測定円)を測定部位に合わせてピントを合わせてから測定ボタンを押して測定します ※1 。つまり、ファインダーの測定円で囲まれた測定部位から発せられ、かつ観察方向へ進行する光束のみを捉えて測定しています。このことにより「(観測方向からの)見かけの単位面積当たり」という定義に沿った測定が可能になる訳です。もし測定部位にピントが合っていなければ、測定部位の外からの光束も混入してしまい、測定誤差になってしまいます ※2 。これは写真撮影時にピントが合っていなければ、撮れた写真がボケボケになってしまうことと同様のことです。

輝度計のピント調節はレンズの距離リングを回して行いますが、測定部位までの距離が近いと、距離リングを最近接端まで回してもピントを合わせきれない場合があります。このような場合は、正しい輝度測定ができないのですが、輝度計の機種によってはクローズアップレンズが付属品として用意されているものもありますので、クローズアップレンズを付加すれば、(クローズアップレンズの仕様範囲内で)更に近距離までピントを合わすことが可能です。

測定部位近辺の輝度分布が不均一な場合の注意点

輝度計は狭い受光角で測定しますので試料面の測定部位の面積はかなり小さく、一般的には、測定部位近辺の輝度分布の変化の影響を比較的受けにくいと言えますが、測定部位およびその近辺の輝度分布の不均一性が大きい場合には測定誤差に繋がる場合がありますので以下の ① ~ ③ のような注意が必要です。

① 輝度計の保持はしっかりと!!(手振れに注意)

上述のように、輝度測定は、測定部位を厳密に規定することが正しい測定の前提条件になります。実際の測定操作において、特にハンディタイプの輝度計においては、輝度計のグリップ部を片手で保持して測ることが多く、(キッチリとピントを合わせても)測定ボタンを押す操作によって輝度計が手振れを起こしてしまうことがあります。その結果、輝度計の測定エリアが被測定面を「走査」することになってしまい、手振れ写真と同様なことが起こってしまいます。

被測定部位の周辺部の輝度分布がほぼ均一であれば、手振れが起こっても測定誤差は殆ど無視することもできますが、周辺部の輝度分布が大きく変化している場合は大きな測定誤差に繋がってしまいます。従って、輝度計にもう一方の手を添えて肘を固めてしっかりと保持した状態で測定ボタンを押すような配慮が必要です。

特に、測定距離が長い場合は、手振れによって輝度計が被測定面上を「走査」してしまう距離
(測定位置誤差 Δ xd × Δ θ )が長くなりますので、測定部位近辺の不均一な輝度分布による測定誤差が大きくなりがちです。

輝度計を三脚やカメラ台に固定して測定するようにすれば、手振れの心配は無くなります。※3

② 測定エリア内での試料面輝度分布が不均一な場合、測定結果は面積加重平均になる

(レンズ結像式)輝度計の受光角は、ファインダー内測定エリア指標の例えば測定角 1° の測定円で示されるように、通常は非常に狭い面積を測定しますので、測定面積内の輝度分布は概ね均一である場合が多いのですが、場合によっては測定面積内での輝度分布に凹凸がある場合もあります。この場合の測定値は、輝度分布の面積加重平均値になりますので、測定値の意味・・・測定面積をもっと細かく分割すれば、測定値よりも高い輝度部分もあれば低い輝度部分も存在すること・・・を正しく理解しておく必要があります。

従って、測定円内での試料面輝度分布の不均一さが懸念され、その詳細まで確認したい場合は、ピントの合う範囲で測定距離を短くして(すなわち、測定レンズの距離リングの最近接端で)測定面積を最小化し、測定点の数を増やして輝度分布を測定するとよいでしょう。 また、クローズアップレンズを付加すれば、更により小さい面積を測定できます。

③ 測定部位近辺に高輝度部が存在する場合

輝度計の受光光学系は、ファインダー内に示された測定円内からの光束のみを抽出測定するようになっています ※1 。つまり、輝度計センサーの受光角度に対する感度分布は、理論的には下図左のように、測定円内では均一な所定感度、測定円外ではゼロであるべきです。ところが実際には(極力理論通りになるように設計されてはいますが)完全なステップ関数になっている訳ではなく、下図右の様に、測定円境界の外側直近部では受光感度がわずかながら尾を引いています。

一般的な緩やかな輝度分布面であれば、この問題は殆ど無視できるのですが、高輝度エリアに境を接する低輝度エリアの境界近辺の測定を行う場合は、尾を引いた受光感度部分が測定誤差を引き起こしてしまいます。

測定円(例えば 1° )の境界を挟んで隣接した、円内のA部と円外ののB部について、A 部の受光感度に対する B 部の相対受光感度が0.1 % であったと仮定します。 A 部と B 部の輝度が同程度の場合には、 B 部の影響は殆ど無視できます。しかし、 A 部の輝度に対して B 部の輝度が仮に 1000 倍であったらどうでしょう。
B 部の輝度評価が A 部の輝度評価と同等の重みで測定値に混入されてしまいます。

つまり、高輝度エリアに境を接する低輝度エリアの境界近辺を測定する場合は、高輝度エリアからのノイズ光を受け易いということに注意する必要があります。このような場合、低輝度エリアの輝度分布が概ね一様であると考えられる場合は、高低の輝度境界から少し離れた位置で測定する方が無難であると言えます。

輝度は測定距離に無関係か?(念の為、測定距離データを残しておく)

第一部第9回「輝度の性質」でお話ししましたように、輝度は測定距離には依存しない、とされることが多いのですが、そのためには前提条件があることがつい忘れられることが多い様です。その前提条件は 第一部第9回の注釈 ※6 をご参照下さい。理想通りであれば輝度測定に測定距離は関係が無いのですが、実際の測定条件は様々ですので、いつもこの前提条件が満たされているとは限らず、測定輝度値が距離によって幾分変動してしまうこともあります。実際、何か問題が発生して、後日再測定するということも起こり得ますので、その場合の測定再現性を確保するために、念の為測定距離データを残しておくことをお勧めします。

輝度計の照度測定への適用

ここでは、輝度計使用時の注意事項という訳ではありませんが、前回(第6回)「照度計を使用する時の注意点」の照度測定誤差との関係で、輝度計を利用して照度測定誤差を回避する手段について述べます。

第一部第10回「反射面における照度と輝度の関係」で説明しましたように、或る反射面への入射光束による照度と反射光束による輝度との間には比例関係があります。従ってこの関係を利用すれば、輝度計によって照度を測ることも可能になります。ただし、そのためには条件があり、反射面の拡散反射配光特性および反射率特性のデータが予め分かっていることです。しかし、これらの特性は不明な場合が殆どで、かつ一般に反射面の種類(材質や表面状態等)毎に、また、入射角、反射角毎に異なっていますので、簡単に適用するのは困難です。

このような問題に対して、「標準白色反射板」と呼ばれる光学製品を使用することにより、この問題を克服することが可能です。「標準白色反射板」とは、その反射面が(理論的な完全拡散反射面に準じた良好な)均等拡散反射特性を持ち、反射率も高い( 90 数 % )反射板です。この反射面への入射光束による照度を E [ lx ] 、反射光束による輝度を L [ cd / m2 ] とすると

という関係が成り立ちます (第一部第10回の注釈 ※3 参照) 。 ρ は反射面の反射率(正確には輝度率・・・ 第一部第12回の注釈 ※1 参照)で、その標準白色反射板固有の特性データが値付けられて販売されています。

理論的に、均等拡散反射面では照明方向(入射角)にも観察方向(反射角)にも関係なくこの関係式が成り立ちますので、任意の方向から、輝度 L を測定することにより、計算によって照度 E を求めることができます。

前回(第6回)において、照度計の受光エリアよりも小さい面積の照度を測定したい場合、照度計では受光エリア内での位置による受光感度分布が不均一なために正しい測定が困難であることをお話しました。このような場合、輝度計と標準反射板を使用することで、照度計の受光エリアよりも小さい面積の照度を求めることができます。輝度計は非常に狭い受光角で反射面の小さな面積の輝度を測定できますので、照度を測定したい場所に標準白色反射板を置き、その反射面の小さなエリアを輝度計で測定し、上の関係式を用いて計算することにより照度を求める訳です。

均等拡散反射板においては、その面の輝度を測る場合、理論的にはどの反射角方向から測定しても同じ輝度値が得られるはずなのですが、現実の標準白色反射板は理想の均等拡散反射とは言い切れず、入射光に対する正反射方向は、その近辺の反射方向に比べると、反射配光特性が僅かに高めになっていますので、正反射方向を避けて輝度測定した方が良いでしょう。

注釈
※1 輝度計の基本構成例(レンズ式フィルタ型の場合)

(レンズ式フィルタ型)輝度計は、被測定面の像を対物レンズによって結像面に結像させ、像面絞りによって、被測定エリアからの光束のみをくり貫いてセンサーユニット(視感度補正フィルタ + 光電検出器)で受光する仕組みになっています。
ピントが調整された状態では、像面照度 E は被測定面輝度 L に比例します( Eτ Ω L )ので、像面照度 E を測って輝度 を算出する訳です。ただし、Ω は像面絞りへ入射する光束の開き角(立体角)、 τ は(レンズを含む、被測定面からセンサーユニットまでの)媒質の透過率です。ただ単にレンズで結像させるだけでは像面照度 は、立体角 Ω や透過率 τ によっても変化してしまいます。ピント調整によって対物レンズを前後に移動させると、センサーユニットへ入射する光束の立体角 Ω は変化してしまいますので、これを変化しないようにするために対物レンズの直後に固定絞りを設けて像面絞りとの組み合わせにより、強制的に立体角 Ω を定数化しています。また透過率 τ については、特殊な条件(霧の中の街灯、水族館の水中照明など)の場合には変化してしまいますが、通常の測定条件下では、一定とみなせることが殆どです。結局、通常条件下では像面照度 E と輝度 が単純比例の関係となります。

※2 レンズ式輝度計のピント調整と測定誤差

測定距離 d1 において、ピント調整された状態では、測定対象エリアがセンサーユニット前面に設けられた像面絞り(固定ホール)位置に結像しています。つまり、輝度計のセンサーユニット側から見ると、像面絞りと固定絞りを介して、被測定面の測定エリアだけが(ピントがピッタリと合った状態で)見えています。

輝度計の距離調整がこの状態のまま、例えば被測定面がもっと遠い測定距離( d2 )になってピントがずれた場合、輝度計のセンサーユニット側から見た被測定面のエリアは、ピントが合っていた距離 d1 の場合に比べてもっと大きな範囲になり、測定部位の外からの光束も測定に混入することになってしまいます。

※3

輝度計の機種によっては、グリップ部の下側に三脚用のネジ穴が設けてあるものもあります。

輝度計を使用する時の注意点

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