【画像ラボ2026年4月号掲載】
ハイパースペクトルカメラ用照明の様々な開発事例
はじめに
ハイパースペクトルカメラは、高い波長分解能で画像を取得する機能を持ち、高精度の色検査や異物検出、成分分析、膜厚測定といった様々な検査や分析を実現することが可能である。かつては研究用途や分析目的での活用が中心であったが、近年では異物検査や選別工程など、生産現場におけるインライン検査への導入事例も増えている。長年にわたりマシンビジョン用LED照明の製造・販売に携わってきた当社では、こうした多様な市場ニーズに応えるため、ハイパースペクトルカメラの各種用途に適した照明の開発を進めている。本稿ではその取り組みについて紹介する。
ハイパースペクトルカメラ用照明が備えるべき波長特性
ハイパースペクトルカメラの感度波長域は、可視光センサの場合でおよそ400 ~ 1000 nm、近赤外光センサでは900 ~ 1700 nm程度が主流である。ハイパースペクトルカメラの性能を十分に発揮させるためには、これらのカメラの感度波長域を途切れなくカバーする発光スペクトルを持つ照明が不可欠となる。当社では、このような波長域に対応する光源として、LEDとハロゲンランプを用途に合わせて提案している。以下でそれぞれの照明について紹介する。
インライン検査向け 高出力ハイパースペクトルカメラ用LED照明(LNSP-FNシリーズ)
生産現場のようなインライン検査用途でハイパースペクトルカメラを導入する場合、タクトタイムに対応するために、明るさとブロードな発光スペクトルを両立した照明が必要となる。従来では、そのようなハイパースペクトルカメラ用照明はハロゲンランプのみであったが、当社ではハロゲンランプと同等以上の高出力かつ、ブロードな発光スペクトルを持つLED照明を開発した。製品ラインアップとして、可視光タイプのLNSP-289FSWIR97-BTFN、近赤外光タイプのLNSP-300IR165IR98FN2を取り揃えている(第1図)。

LNSP-FNシリーズの外観

可視光タイプ LNSP-289FSWIR97-BTFNの出力波長

近赤外光タイプ LNSP-300IR165IR98FN2の出力波長

撮像事例 3種類のプラスチックの材質分類(赤色:ポリプロピレン 緑色:PET 青色:ポリスチレン)
第1図 高出力ハイパースペクトルカメラ用LED照明(LNSP-FNシリーズ)
また、波長・照明形状・長さ変更などの、用途に応じたカスタム対応も可能で、薄膜やコーティングなどの膜厚測定用途に適した高均一タイプのLNSP334IR165IR98DSFNも取り扱っている(第2図)。

LNSP334IR165IR98DSFNの外観

撮像事例 フィルムの膜厚測定
8.5 μm(青色)~10.5 μm(赤色)で厚みの分布を可視化
第2図 膜厚測定用途 LNSP334IR165IR98DSFN
ハロゲンランプ照明の代わりに当社LED照明を用いることで、LEDのメリットである長寿命・低発熱を活かした、インライン検査環境を構築することが可能である。
研究評価向け 可視光ハイパースペクトルカメラ用LED照明
波長400 ~ 1000 nmの幅広い発光スペクトルと、可視光タイプのハイパースペクトルカメラに適した波長特性を持つLED照明である。光出力は前述のインライン検査向け機種には劣るものの、ハイパースペクトルカメラのセンサ感度特性に合わせて近赤外域(およそ800 ~ 1000 nm)の相対的な光出力を大幅に強化している点が特長である。また、波長特性や照明の形状、長さ等のカスタム対応も可能であり、ラインスキャン型カメラに適した集光ライン照明LNSP2-300IRW55-BTSPや、エリアセンサ型カメラ向けの拡散バー照明HLDL3-300X28IRFSWDFWを取り扱っている(第3図)。

ラインスキャン型カメラ向け LNSP2-300IRW55-BTSPの外観

エリアセンサ型カメラ向け HLDL3-300X28IRFSWDFWの外観

研究評価向け 可視光ハイパースペクトルカメラ用LED照明の出力波長
第3図 研究評価向け 可視光ハイパースペクトルカメラ用LED照明
研究評価向け EFFI-FLEX-HSIシリーズ(EFFILUX)
当社グループ企業であるEFFILUX(エフィルクス)社が製品化したEFFI-FLEX-HSIシリーズは、波長400 ~ 900 nmをカバーする発光スペクトルを備えている(第4図)。光出力は他機種と比べるとやや低いものの、可視光域を対象とするハイパースペクトルカメラに適した波長特性を持つLED照明である。

EFFI-FLEX-HSIシリーズの出力波長

EFFI-FLEX-HSIシリーズの外観
第4図 EFFI-FLEX-HSIシリーズ
EFFI-FLEX-HSIシリーズは、照明内部のレンズ位置や拡散板の種類を変更することで、照射範囲や均一度を用途に合わせて調整できる点も特長である。柔軟な光学調整が求められる研究・評価用途に特に適したモデルとなっている(第5図)。

研究評価向け 可視光ハイパースペクトルカメラ用LED照明の出力波長
第5図 レンズの位置や拡散板を用途に合わせて変更可能
ハロゲンランプ照明
当社ハロゲンランプ照明は可視光~近赤外の波長領域において切れ目のないブロードなスペクトルを有している(第6図)。LEDに比べて発熱や寿命の短さがネックになる場合もあるが、光出力は十分に高く、インライン用途・研究評価用途のどちらでも使用可能な照明である。

第6図 ハロゲンランプ照明の出力波長
ハロゲンランプ照明のラインアップとして、近赤外に適した拡散板を備えた高均一モデルTH-200X30CIR、ラインスキャン型ハイパースペクトルカメラ向けに高出力ハロゲンランプを用いた LDL-222X42CIR-LACLを取り揃えている(第7図)。これらのハロゲンランプ照明は、サイズや形状などのカスタムにも対応可能である。

高均一ハロゲンランプ照明 TH-200X30CIR

高出力ハロゲンランプ照明 LDL-222X42CIR-LACL
第7図 ハロゲンランプ照明
【開発品】高速インライン検査での利用を想定した、超高出力ハイパースペクトルカメラ用近赤外LED照明
前述のインライン検査向け高出力ハイパースペクトルカメラ用LED照明(LNSP-FNシリーズ)を実際に提案する中で、高速でのインライン検査ではさらに高い出力(明るさ)を求められるケースが出てきている。こうした要求に対応するために、超高出力モデルの開発を進めている。
LED素子や光学系を基礎から見直した結果、従来タイプの LNSP 300IR165IR98FN2 の3倍程度の明るさを試作レベルで達成している(第8図)。また、発光スペクトルの見直しも行い、従来品より凹凸の少ない、ハロゲンランプに近い滑らかな近赤外スペクトル特性を実現している(第9図)。従来のインライン検査では高出力のハロゲンランプが用いられていたが、ランプの輻射熱によって検査物が加熱され、ダメージを受ける点が長年の課題であった。今回開発した超高出力LED照明は、輻射熱の主因となる中赤外~遠赤外光をほとんど含まない。そのため、検査物に対する熱影響が極めて小さく、ダメージを大幅に抑制できる点も大きな特長である。
今後さらなる検証を重ねて、進化する市場ニーズに応えた実用化を推進する予定である。

第8図 超高出力モデル試作機の外観

第9図 超高出力モデル試作機の出力波長
おわり
ハイパースペクトルカメラを用いた画像検査は、今後さらに活用範囲の拡大が見込まれている。当社では、本稿で紹介した製品だけでなく、カスタム対応や新製品の開発も継続して進めている。また、当社テスティングルームでは、ハイパースペクトルカメラを使用した実験検証も可能であるため、実機検証に活用いただければ幸いである。
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